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新空港開港1周年!石垣島

2014.03.20 Thu.


新空港開港1周年!石垣島
~地場産業のトップランナーを追う~



airport1.jpg airport2.jpg石垣島の新空港「南(ぱい)ぬ島石垣空港」は3月7日、開港1周年を迎えた。
沖縄県八重山事務所の発表によれば、2013年1~12月の八重山(石垣市・竹富町・与那国町)入域観光客数は過去最高の94万人にのぼり、観光消費額は580億1000万円を記録した。
大型インフラの整備がもたらした商機を、地元企業はどう自社のビジネスに活かし、今後の繁栄へとつなげていくのか。石垣島の産業界を牽引する3社に、現状と展望を聞いた。


 2007年の79万人をピークに右肩下がりで減少していた八重山の入域客数。ようやく実現した新空港開港だったが、「開港が決まったものの、観光客数が本当に増えるのか、新空港が及ぼす効果については楽観視できませんでした」と話してくれたのは、平田観光株式会社社長室長の奥平崇史さん。経済効果を過信しての投資はリスクが高い、というのが地元の共通認識だったようだ。
 ところが実際は、LCC(格安航空会社)の就航が相次いで決まり、開港と前後してメディアへの露出が急増。地元産業界と行政が一丸となって取り組んだ全国PRキャラバンや海外クルーズ船の誘致なども功を奏し、入域観光客数は過去最高を約20%も上回る結果に。夏の繁忙期には、前年比160%の入域客数となった月もあった。奥平さんは「宿泊施設や飲食店などのキャパシティを超えて対応が追い付かなくなったこともあったようです」と当時の状況を語ってくれた。
 客数の増加に伴い、客層にも変化が見られたという。「石垣島をはじめ、八重山での上質な体験を求める従来の層に加え、お金をかけずに気軽な旅を楽しみたい層が大幅に増えた印象です」。つまり石垣島の産業界は新空港開港の初年度に、客数の飛躍的な増加とニーズの大きな変化を同時に経験したことになる。


旅のプロデュース力を磨き
リピーター層の醸成を目指す
===平田観光株式会社

 創業42年を迎えた平田観光では、開港前の低迷期から「ヒト」をコアバリューに据えた価値創造・商品展開を実践してきたという。現在では完全オーダーメイド型ツアーの企画提供にも定評があり、「リピーターの方は、観光スポット目当てというよりも『ヒト』目当てで何度も島を訪れます。現地の『ヒト』を介して島の魅力を伝えることが、満足度の向上につながると考えています」と奥平さん。

 新空港開港・入域客数増加の恩恵を持続可能にする上で、「ヒト」をコアにした取り組みは有効なのか。今後を占う興味深い事象がある。同社の「セグウェイツアー」(写真参照)の人気ぶりだ。セグウェイインストラクターの資格を持つ社員が、眺めのすばらしいバンナ公園を案内。公園内の行き先は参加者の希望に合わせるセミオーダー型のツアーで、2時間8000円という高単価ながら前年比200%の売上となった。

 全体の客数の伸びを大きく上回る伸び率は、「新空港開港で大幅に増えた個人旅行客のニーズをうまくつかんだ結果」というのが奥平さんの分析。インターネットを使って情報を集め、好みに合った行き先を探す情報感度の高い個人客にどんな対応ができるか。これは、チャーター機や高級クルーズ船で訪れる富裕層への対応にも共通する課題だという。

 「今後さらに増えるであろう感度の高い層に、"八重山でしかできない旅"を満喫してもらうために何ができるかを常に考えています」という奥平さん。近未来の展望は、と尋ねると、こんな答えが返ってきた。「これまでは縦割り的に、観光なら観光、物産なら物産、と枠組みの中で完結していた。それが新空港開港に向けて1年ほど前から、枠組みを越えて一緒に物産展を開催するなど、物産と観光の融合が活発になってきました。そんな中、当社は観光業の立場から"ヒト"の力で"モノ"と"コト"をつなぐプロデュース機能を担いたい。例えば、島でこだわりのモノづくりをしている職人の工房へ案内したり、地元素材を使ったおいしいレストランでのメニュー選びまでサポートしたりと、対応の柔軟性を高めてリピーターをもっと増やし、石垣島と八重山全体の産業の継続的な発展に寄与していきたいです」

 八重山全体での連携で外にアピールできる魅力を改めて掘り起こしながら、さらに広く発信してファンを増やしていく。これが同社の開港2年目のテーマだ。


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石垣港ターミナル内に本社を置く平田観光。本文で触れたセグウェイツアー(上写真2点)のほか、「星空」「アドベンチャー」など多様な切り口で八重山の旅をプロデュースしている。国際観光振興機構JNTOの認定を受けたビジットジャパン案内所としての機能を持ち、NYタイムズの「2014年に行きたい52の場所」のひとつに選ばれた石垣島のインバウンド対応も担う。奥平崇史さん(下写真右端)は「美しい景色は世界中にたくさんある。なぜ八重山を旅先に選ぶのか、を言葉にできる人が必要」と、域内に散在するモノ・コトをつなぎ、魅力を紡ぎ出すことをミッションに、13名のスタッフと旅行業を営んでいる

平田観光株式会社
石垣市美崎町1番地 
☎0980-82-6711
http://hirata-group.co.jp/


地域資源を活かしたお菓子で
石垣島の魅力を伝える
===有限会社宮城菓子店

 菓子の卸と製造販売を営む有限会社宮城菓子店は、新空港に直営店を構えた効果もあり、2013年は観光関連商品の卸で前年比150%、直営店での直販に限っても同121%の売上を記録した。代表取締役の宮城龍二さんは「販売個数が急増し、商品の安定供給に追われていました」と開港1年目を振り返る。

 大正11年の創業以来、島内の祭事用菓子の製造を担ってきた同社。現社長の代から観光客向けの土産菓子ビジネスに乗り出し、その後「地域資源を活かした新鮮なものを提供したい」と自社でも土産菓子の製造を始めた。石垣島と周辺離島を結ぶ定期船が発着する石垣港ターミナル前に初の直営店を構えたのは2005年のことだった。

 「直営店を持ったことで、原材料にまでこだわった菓子をできたての状態で、かつリーズナブルな価格で出せるようになりました。この直営店は商品の良さを伝える発信拠点であり、また顧客の声を集めるマーケティング拠点でもあります」と宮城さん。外部専門家の意見も取り入れながら、売り場改善にも取り組んできた。「一番売れている商品がどれか、すぐわかるようにしただけで、販売数が倍増したことも。外国語のPOPを付けるインバウンド対応も始めました」

 それらの経験は直営二号店となった空港店の売り場づくりにも活かされたという。「社外コンサルタントと意見を交わしながら、石垣島らしいイメージを追求したデザインと、メリハリのあるディスプレイを心掛けました」

 そうした取り組みの賜物が冒頭の業績というわけだが、宮城さんの視線は既に次なる目標へと向いている。「空港店で見込める安定的な売上を土台に、次は地元の素材を使った島産品の開発に注力したい。文字通りその"土"地で"産"まれた本物の"お土産"を、一番おいしいできたての状態で提供できる仕組みをつくりたいと思っています」

 宮城さんのビジョンは、製造業者としての自社単独の成長だけでなく、島全体の経済発展を見据えたものだ。「観光客の増加を地元企業の発展につなげるためには、一次・二次・三次産業と行政が協働して価値を創造する必要があります。今後は、二次・三次を手がけながら積極的に一次産業にも関わっていき、島の魅力をお菓子で今まで以上に表現していきたい」と展望を語ってくれた。


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宮城菓子店は、島の塩を使い全日本菓子大博覧会名誉総裁賞を受賞した「石垣の塩ちんすこう」など、地域資源を活用した自社製造菓子(上左写真)を2つの直営店(上右写真は空港店)で販売している。島の暮らしに根付いた菓子を使って今までにないものを、と製造主任の半谷克敏さん(下写真)が中心となって開発した「塩せんべいフロランタン」は、発売から2年で売上10倍増というヒット商品だ

有限会社宮城菓子店
石垣市字石垣727-1
☎0980-83-4833
http://miyagikasiten.com/


農家の所得向上を目的に
地元に愛される事業を展開
===農業生産法人 有限会社伊盛牧場

 石垣島でじわじわと拡がりつつある、既存の枠組みを越えた事業展開の動き。これを自社内で実現してきたのが、有限会社伊盛牧場だ。代表取締役の伊盛米俊さんは120頭の乳牛を飼育する酪農業の一方で、名蔵湾を一望できる景勝地にジェラート店「石垣島ミルミル本舗」を構え、観光客や地元客の人気を集めている。

 新空港開港を見越し、空港内のテナント出店の応募条件を満たすべく、高台の好立地で第一号店をオープンしたのが2009年。確実に実績をつくり、狙い通り新空港内に2店舗目を開店した。空港店は常に客足が途絶えず、総売上は前年の4倍と驚異的な伸びを示している。

 伊盛さんは、「開港1年目の成功はご祝儀みたいなもの。2年目以降が正念場です」と好業績を静観している。「過去最高の入域客数とはいえ、11月半ばから12月には客足が落ちて売上はピークの半分ほどに。安定的な発展には、閑散期を支えてくれる地元のお客様を大事にすることが不可欠です」

 そんな伊盛さんの経営目標は、「石垣島の農家の所得向上」。酪農業から小売・サービス業に事業拡大したのもそのためだ。商材にジェラートを選んだのも、島の特産品であるフルーツの規格外品を活用できると考えたから。観光の繁閑の波に左右されないよう、地元客が日常的に親しめる手頃な価格設定にもこだわった。

 島の資源を活かして島の産業を元気づけようという姿勢は、付加価値の高い景勝地の活用方法にもうかがえる。「この場所がもしリゾートホテルになったら、観光のオフシーズンを支えてくれる地元の人は来にくくなり、観光客もホテル利用者に限定されてしまいます。そうではなく、誰もが来られるスポットにして、石垣島ならではの眺めと、石垣島ならではのいいものを楽しんでもらえるようにしたかった」と伊盛さん。現在、大型バスの乗り入れを希望する声が高まっており、第一号店の設備拡大を検討中だという。

 「今就航している航空会社が1社でも撤退すれば、競争がなくなり運賃が上がって1年目のような恩恵は受けられなくなります。これも当然起こり得ることとして捉え、それでも来てくれる観光客や地元客にどう楽しんでもらえるか、さらに知恵を絞っていきたい」。石垣島の大地にどっしりと足を着け、さらなる事業展開を目指す伊盛さんだ。


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ジェラート店「ミルミル本舗」は、島内随一の景勝地(下段左写真)と空港での2店舗展開。ジェラートはホテルへの卸や県外発送にも対応している。「乳牛を食肉に加工した『ミルミルバーガー』や惣菜用冷凍ハンバーグなども商品化しています」と伊盛米俊さん(下段右写真)

農業生産法人 有限会社伊盛牧場
石垣市新川1510-67
☎0980-83-1316


 石垣島のトップランナー企業に共通するのは、インフラ整備の恩恵をただ受けるだけでなく成長の機会と捉え、「モノをつくる」「顧客ニーズを把握する」「伝える」「売る」といった地場産業の"底力"強化に活かそうとする姿勢だ。そして、石垣島を含む八重山諸島全体の魅力と地域資源を、各社単独の視点に加えて"連携"の目からも見つめ直し、既存の枠に捉われず相互補完的な事業展開を図ろうとする気運の高まりも感じられる。
 人口4万8000人の石垣島に、人口の20倍近い観光客が訪れた開港1年目。島の実態に適した経済発展の方向性や規模、スピード感も模索しながら、2年目の取り組みはもう始まっている。

 

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