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株式会社美ら音工房ヨーゼフ 代表取締役社長 仲村 幸夫さん

2013.12.20 Fri.

【executive INTERVIEW 沖縄に立つ 沖縄を発つ(3)】
株式会社美ら音工房ヨーゼフ
代表取締役社長 仲村 幸夫さん

既成概念にとらわれない独自設計のオーボエで
小さな楽器工房が開いたグローバルビジネスへの扉



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 南城市玉城の田園地帯。海を見下ろす閑静なエリアに、年間400本のオーボエなど木管楽器を製造する工場がある。株式会社美ら音工房ヨーゼフは1986年の創業以来、独自の発想で楽器づくりに取り組んできた楽器メーカーだ。ここから送り出される楽器たちはワールドクラスの奏者たちの高い評価を獲得。創業100年、200年の老舗がトップシェアを占める世界のクラシック楽器市場で、ユニークな存在感を示している。

 創業者である代表取締役社長の仲村幸夫さんは、クラシックの本場ドイツでプロのオーボエ奏者として活動していたという経歴の持ち主だ。地元沖縄の高校の吹奏楽部でオーボエに出会い、東京の音楽大学に進学。卒業後はドイツでプロのオーケストラに籍を置いて活躍していた。
 仲村さんが楽器のつくり手へと転身するきっかけは、このドイツ時代にあった。「高い音や低い音、響きの良い音を出せるかどうかは奏者の技術次第…そんな従来の楽器に満足しなかった、ということですね。奏者に負荷をかけずに良い音が出せ、操作性でも不合理な点が少ない楽器は必ずつくれるという確信がありました」と仲村さんは当時を振り返る。

 しかし、オーボエは操作・演奏が難しいことでギネスブックに載るほどの精密機械。高い工業技術に芸術性も付加されて初めて商品になる。さらに、奏者が楽器のつくり手になることは業界的にも異例で、36歳での転身も一般的には遅すぎると言われたが、仲村さん自身は何の躊躇もなかったという。欧州から職人を招聘して楽器づくりの指導を受け、4カ月かけて最初の1本を完成させた。「それを試奏してくれたのが、知人であり世界屈指のオーボエ奏者であるマンフレート・クレメントさんでした。彼はこれを大変気に入り、そのまま顧客第一号になってくれました」と仲村さん。

 現代の楽器製造は、世界一とされる名器のコピーをつくるのが基本になっていると仲村さんは話す。「ただ、楽器は自動車などと違い、出来不出来が命を脅かすものではないため、追究されないままの問題点を数多く抱えています。それをコピーするから、いい部分も悪い部分もそのまま継承されてしまう。それではつくる意味がないと感じたので、当社では、1000以上あるパーツの一つひとつから、全部自分たちで設計しています」

 記念すべき第一号作「クレメントモデル」の誕生以降は、製造技術の研鑽に加えて顧客と販路の開拓にも注力。埼玉を拠点に、日本そして世界の市場で「一度吹くと手放せなくなる」というヨーゼフの楽器のファンを増やしてきた。
 そして2007年には埼玉から沖縄に本社と製造拠点を移転。「1カ月のうち沖縄にいるのは3日ほど。営業所を立ち上げた北京に1週間、残りは東京と大阪を飛び回っています。それでも沖縄に本拠を移したのは、オーボエを始めた原点がここだということ。沖縄がなかったら今の自分はないんです。製造業が少ないという課題を抱える故郷に恩返しがしたい、という想いもありました」と仲村さん。沖縄特有の輸送コストの問題も、単価30~150万円という高付加価値のモノづくりで乗り越えている。

 「沖縄は伝統的に音楽が盛んな島。楽器製造は付加価値が高いだけでなく、この伝統を競争力に変える可能性を秘めたビジネスです。定着すれば一大産業に育つ可能性が」。そう語る仲村さんの考えの根底には、「小さな会社や地域だからこそ、他がやっていないことをやり、戦わずにオンリーワンでナンバーワンになるべき」という思想が流れている。

 さらなる事業拡大に向け、オーボエの100倍もの演奏人口が存在するとされるクラリネット市場に向けた商品開発にも取り組んでいる。クラリネットづくりでも金具ひとつの形状に至るまで常識にとらわれず、「演奏する人にとって最も望ましい楽器の姿」を構想してオリジナルをつくり上げる"ヨーゼフ流"は変わらない。また商圏拡大に向けては、産業振興公社の「県産工業製品海外販路開拓事業」を活用してフランスやスペイン、イタリア、ドイツの展示会に出展。より多くの人にヨーゼフの楽器を届けたい、という想いに加えて「世界中に顧客を持ち、一国の景況に左右されない安定経営を」という視点からの戦略的な展開でもある。

 2013年3月には北京にメンテナンス・販路拡大のための拠点を開設。10億人市場の中国だが、反日感情から取り引きが難航することも少なからず経験したという。「そんな時は現地に出向き、酒を酌み交わし、理にかなった演奏法を教えます。そうすれば楽器の良さをわかってもらえるんです」
 芸術家であり、職人でもある異色の経営者、仲村さん。平均年齢35歳、19名の楽器職人たちとともに、「クラシック音楽の世界で沖縄ブランドを確立する」未来へと、着実に歩みを進めている。

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楽器のブランド名「ムジーク・ヨーゼフ」は、ドイツでのプロ奏者時代に付けられた仲村さんのニックネーム「ヨーゼフ」から。自動車の部品製造にも使われる機械を導入して精密さを担保する一方、ジュエリーをつくるような繊細さが必要な工程は職人の手で行う。設計だけでなく、製造工程までもがオリジナルだ


株式会社美ら音工房ヨーゼフ
設立:2007年7月 事業内容:木管楽器製造・
販売・修理、楽器付属品・楽譜販売 
本社所在地:南城市玉城字志堅原358-1 
☎098-948-2502 
自社サイト:http://www.josef-oboe.com

 

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