ニュース

FC琉球 いざ、Jリーグへ

2013.12.20 Fri.


FC琉球 いざ、Jリーグへ
~スポーツ・ツーリズム黄金時代へのビジネス展望~



flag_resized.jpg hug_resized.jpgFC琉球は設立11年目の2013年11月19日、悲願のJリーグ入りを果たした。このチャンスを最大限に活かし、ビジネスとしての成功をどう導くのか。県や市も巻き込んだ取り組みの現場に、今後の展望を探った。


Jリーグチームの誕生が
地域にもたらすものとは

 「沖縄初のJリーグクラブ」を目指して2003年に誕生したFC琉球は、設立11年目にして念願のJリーグ(ディビジョン3、略称J3)参入を果たした。これは観光立県を標榜する沖縄にとっては、願ってもない大きなチャンスだ。
 地域にJリーグチームを有する効果の大きさは、過去の例からも明らかだ。サッカー不毛地帯と言われた新潟でも、地元クラブ「アルビレックス新潟」のJリーグ入りを機に、7年で年間約67万人をスタジアムに動員するまでに成長。内閣府国民生活白書によれば、地域経済に21~25億円の経済効果をもたらしたとされている。

設立から苦節11年
遂にファーストステップ達成

 ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。2006年に県内から初めてJFLに参入したが、その後のJリーグ準加盟申請では、運営体制やスタジアム整備、地元の支援体制などに指摘を受け、二度の挫折を味わっている。
 しかし、2010年に「沖縄初のJリーグチームを誕生させる会」が16万4856筆の署名を集め、沖縄県総合運動公園陸上競技場(以下沖縄県陸上競技場)の改修を要請。これを受けた沖縄県が2012年、沖縄県陸上競技場をJ2規格に改修することを決めた。さらに2013年3月、Jリーグが新ディビジョン「J3」の発足を発表。これで道が大きく拓け、同年5月にFC琉球は新たな運営会社として琉球フットボールクラブ株式会社を設立。9月には難関だったJリーグ準加盟が遂に承認され、同年11月にJ3参入が確定したのだった。

地域密着&魅力向上で
J2、そしてJ1を目指す

 FC琉球がJ3チームとして戦っていく上での展望を、琉球フットボールクラブ株式会社の代表取締役である下地良さんに聞いた。
 「JFL時代に1試合平均2000人弱だった観客動員数を、まずはJ2昇格基準の3000人以上へ引き上げていきます。それには、リーグ戦での勝利はもちろん、沖縄県民の皆さんにもっと注目されるチームになる必要があると感じています」と下地さん。選手の育成を通した戦力向上と、チームと県民との接点強化、これらが喫緊の課題だという。サッカースクール「FC琉球アカデミー」の運営も、育成と接点づくりの両面において重要な取り組みだが、2013年終盤、クラブのホームタウン沖縄市出身でアカデミー育ちの18歳、真栄城兼哉選手が存在感を示す活躍をしたことは、クラブにとって明るいニュースだ。
 「日本のサッカー人口はJリーグ開幕後の20年余りで100倍に成長したと言われています。県のサッカー協会によると沖縄では今、小学生世代のサッカー人口が増えているそうです」と、下地さんは沖縄におけるサッカーの伸びしろにも期待を寄せる。選手による出張サッカー教室や病院などの施設訪問、ホームタウン沖縄市のイベントへの参加なども、これまで以上に力を入れる方針だ。J3入りを機に、チームの顔として長年活躍してきた「ぐしけんくん(仮)」の後を継ぐ新たなマスコット・キャラクターも近々一般公募するなど、より広く県民への浸透を図っていく。
 実は、FC琉球には海外からも熱い視線が注がれている。2013年からチームに加わったマレーシア代表のワンザック・ハイカル・ビン・ワンノル選手(以下ワンザック選手)の存在が、予想以上に大きなビジネスの可能性を拓いているのだ。「人口2900万人のマレーシアでは、300万世帯が視聴する衛星放送『アストロ』でのサッカー有料チャンネル視聴数は190万件。国民的人気を誇るワンザック選手がスタメン出場するようになれば、『アストロ』での放映権収入やマレーシアからの観戦ツアー送客なども推進できると考えています」と下地さん。
 FC琉球への注目がより多方面から集まれば、スポンサーにとってもメリットが大きくなり、クラブの経営基盤も強化されていく。下地さんは「大企業がスポンサーのクラブとは異なり、FC琉球は地域に支えられるクラブを目指しています。個人の方や小規模事業主の方にも支援していただきやすいよう、数万円から数千万円まで幅広いスポンサー枠を用意しています」と説明する。J1には300社ものスポンサーを持つクラブもある中、FC琉球としては現在の約130社からまだまだ増やす余地があるとの考えだ。「Jリーグ加盟によってリーグからの配分金も発生します。そうした好条件を活かして経営安定化をさらに進めながら、より魅力あるチームへと育て、『サッカーを通じて地域の活性化に貢献する』という目標に向かって、県民の皆さんと一歩一歩進んでいきたい」という下地さん。30代の若き経営者の挑戦は今、新たな幕開けを迎えたばかりだ。

ganaha_school_resized.jpg wanzack_resized.jpg
左上写真:サッカー教室で子どもたちを指導する我那覇和樹選手 右上写真:マレーシア代表のワンザック選手。Facebook上の個人ページに17万人ものファンを持つ、マレーシアのスター選手だ。ワンザック選手の話題をFC琉球のFacebookページで提供すると、マレーシアからのアクセスやコメントが殺到するという

maeshiro_playing_resized.jpg
真栄城選手(左端)は、FC琉球U-15で副キャプテンを務め、2013年にアカデミー出身者として初めてトップチームに入団したクラブ生え抜きのルーキーだ。シーズン終盤戦では、2試合連続で得点を決めるなど、頭角を現している

shimoji_resized.jpg
琉球フットボールクラブ株式会社
代表取締役 下地良さん
☎098-987-1619
http://fcryukyu.com/


全県的取り組みが呼び起こす
サッカー人気高揚の兆し

 一方、沖縄県ではFC琉球に対するさまざまな支援を行っている。
 環境整備の面では沖縄県陸上競技場の改修に加え、芝生環境の向上を図るため、芝生管理の人材育成にも取り組んでいる。また、FC琉球を活用したサッカーキャンプ誘致を行っており、2011年に7チーム、2012年に12チームのサッカーキャンプを誘致。延べ4000泊以上もの新規需要を開拓した。
 動員支援の面では2011年に沖縄県が中心となり、10団体で「FC琉球支援連絡協議会」を発足。J3入会審査の段階に入った2013年8月には33団体にまで拡充した。沖縄県文化観光スポーツ部の嘉手苅孝夫統括監は、「まずはより多くの方々に公式戦へ足を運んでもらうことが大切。そのため、県内マスコミ9社全てに協議会への参加を呼びかけ、情報発信力の強化を図りました」と拡充の狙いを語る。
 こうした全県的な取り組みの成果が表れた例として、2012年に初開催された「全島サッカー一万人祭り」の成功が挙げられる。1年目の観客数は1万1658人となり、JFLの年間最多観客試合を記録。入場料を有料化した2年目も1万116人と、目標の1万人動員を無事達成した。
 2013年9月の県議会では、県として琉球フットボールクラブ株式会社へ3000万円の出資を決定。「サッカーを通して沖縄を世界にPRし、県内では子どもたちを始め県民に夢や希望を与えてほしい」というFC琉球への期待の大きさがうかがえる。

kadekaru_resized.jpg
沖縄県文化観光スポーツ部 
嘉手苅孝夫 文化スポーツ統括監


「スポーツを通じた青少年育成を」
地元沖縄市も全力で応援

 FC琉球のホームタウンは、沖縄県陸上競技場と沖縄市陸上競技場の2大スタジアムを有する沖縄市だ。1996年に「スポーツコンベンションシティ宣言」を行うなど、スポーツを軸とした地域振興策に早くから取り組んできた。プロ野球キャンプを始めとするスポーツ合宿の誘致や、プロバスケットボールの琉球ゴールデンキングス(以下キングス)との連携など、その実績は枚挙にいとまがない。沖縄市経済文化部の屋良保部長はFC琉球への支援体制について、「現在は主にPR系の支援を行っています。市内沿道のバナー(のぼり)の設置や公用車へのマグネットシールの貼付、市のイベントへ選手を招く形で公式戦への動員促進なども積極的に実施しています」と語ってくれた。
 2013年の夏には、サッカーへの支援に積極的な姿勢が評価された嬉しい出来事が。イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドサッカースクールを沖縄市に誘致することに成功したのだ。これは同スクールのコーチ陣が世界各地を巡り、子どもたちにサッカー指導を行う企画で、日本での開催は同年が初めて。沖縄市を含め全国10カ所で実施され、総参加者数は1000人以上という大規模なイベントだった。さらに、全国の参加者の中からイギリスへ招待される優秀選手6名のひとりに沖縄市比屋根小学校の2年生児童が選ばれるという快挙もあり、地元は大いに湧いた。屋良部長は「国内・世界のトップレベルの選手との交流は、子どもたちに与えるプラスの影響が非常に大きい。さらに選手たちが地元に来れば人も動きます。FC琉球への支援を通して今後もプロスポーツ界との接点を増やし、市全体の活力向上を図りたい」と声を弾ませた。

yara_resized.jpg
沖縄市経済文化部
屋良保 部長


J3入りを起爆剤に
沖縄スポーツビジネスの新時代を

 FC琉球のJ3参入が、沖縄のサッカームーブメントを現在進行形で形成しつつある今、県産業界はこの流れをどのようにとらえるべきか。嘉手苅統括監は「サッカーを始めとするスポーツは、沖縄県の特性に合った素晴らしい産業。ぜひ関連するビジネスアイディアを創出し、この波に乗って欲しい」と呼びかける。屋良部長は「沖縄市では、キングスの試合観戦時に臨時駐車場を市内中心部に設置して導線をつくるなど、市内での消費行動を促進する試みが成功しつつあります。FC琉球にも同様の取り組みを検討するなど、目に見える経済効果につなげていきたい」と意気込む。
 2020年の東京オリンピック開催も決定し、海外からのインバウンド(入域観光客)増加にも期待が高まる中、これから日本全体がスポーツ観戦を目的とした旅行、いわゆる〝スポーツ・ツーリズム〞の黄金時代を迎える。そして沖縄では、ワールドカップの開催年でもある2014年にJ3開幕、2015年にJ2規格スタジアム完成予定、さらに将来的にはJ1規格スタジアムも完成予定…とサッカーだけでも大きな動きが続く。日本国内に1200万人、世界では16億人のファンがいるとされるサッカーの世界的人気を沖縄に取り込む準備が整い、県内のビジネスパーソンにとっては新たなフィールドが今まさに目の前で広がりつつある絶好の機会だ。3月のJ3リーグ開幕戦にはぜひ足を運び、自らのビジネスとの接点を模索してほしい。

 

最近のニュース一覧

OVSニュースランキング

アクセス数が多かったニュースランキングベスト5です。