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アグリビジネスの注目株「植物工場」の現在と未来

2011.12.13 Tue.

--アグリビジネスの注目株--
安心・安全・安定供給を目指す「植物工場」の現在と未来




今、次世代の新しい農業スタイルとして注目を集めている「植物工場」育ちの野菜たちが県内でも生産、出荷されている。
従来のイメージを覆す植物工場の現状と可能性を探った。






香港への輸出も始め順調に販路拡大--(株)インターナショナリー・ローカル


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 糸満市糸満にある株式会社インターナショナリー・ローカルの代表取締役社長・佐々木康人さんが、農業経験もない中で植物工場経営に乗り出したのは2008年だった。出身地北海道から遠い沖縄を選んだのは「葉野菜の安定供給」「リゾートホテルへの出荷」「アジアへの輸出」が見込まれること。こうして2010年1月、県内初の植物工場が完成した。主な作物は高級食材のアイスプラント、ベビーリーフ、わさび菜など、取引価格が高い商品だ。栽培に適した水や栄養分の補給、空気洗浄を行い、農薬を使わない安心で安全な野菜を販売する。
 一般的な植物工場での課題は初期投資額と電気代の高さ。初期投資は工場建築費のほかに、作業の効率化を図るための機材に費用がかかる。佐々木社長は機械による自動化にこだわらずコスト削減を図り、「機械と作業員が管理する部分を分け、作業員の目で野菜の状態をチェックし、手作業で収穫することできめ細やかな状況把握ができる」とメリットを挙げる。当初は県内のレストランやスーパーで販売し、今年から香港への輸出、ネット販売、県内ファミリーマート全店での取り扱いも始まった。電気代の削減についてLEDの使用や太陽光パネル、風車など自然エネルギーの活用も検討している。
 今後の目標は県内にもう1カ所工場を建設することだ。さらに、本土を含め、香港やシンガポールでの現地生産を視野に入れているという。佐々木社長は「露地栽培と競合するのではと言われたが、植物工場が露地物を補完する立場として、野菜を安定供給していきたい。そうすれば農家の安定収入にもつながる」と話し、「起業の理念である『世界中の人の心身を健康にする』ことを実現したい」と沖縄発
の新たな取り組みに意欲を見せた。


株式会社 インターナショナリー・ローカル
HP:http://www.inloco-store.com/






葉物野菜の端境期を狙い市場へ参入
--(株)ぐしけん



gushiken01.jpg 株式会社ぐしけん(稲嶺利政代表取締役社長)といえばパン製造の老舗メーカーだが、2010年9月から新規事業として北中城村で植物工場への参入を図った。フリルレタスやグリーンリーフを栽培し、自社のベーカリー部門のサンドイッチに使うほか、今年6月からはコープおきなわに卸し、生産する全ての野菜がその日の内にほぼ完売の状況だ。植物工場参入は同社ベーカリー部門で使用される野菜を、夏場の端境期に調達することが目的だった。工場責任者のリサイクル事業部取締役事業部長・知念進さんは、「取引のあったコープおきなわさんから『サンドイッチの野菜がおいしい』と言われ、店舗で販売した。安心安全や地産地消に関心の高い購買層と、我々が目指す沖縄産の新鮮で安全な野菜のコンセプトが合致した」と話す。
 同社にとっては新分野の開拓となったが、実は、工場責任者の知念さんにとっても農業は未経験。インターネットを使って調べたり、業者を訪ねたりしたが、栽培方法は確立されたものが少ないため「企業秘密」の部分が多く、調査は難航したという。「栽培は試行錯誤の状態で始まったが、独自のノウハウも徐々に確立した」と知念さん。最大の課題は運営コストだ。要因は電気代の高さにある。知念さんは「生産しているのは野菜にもかかわらず農事用電力として認定されない。コスト削減のために農事用電力の認定が受けられるようなシステムにしてほしい」と強調し、行政のバックアップを求める。
 さらに、懸念材料として挙げているのは販売価格の問題だ。同社が目指すのは「年間を通して一定量を一定の品質で定価販売すること」。夏場は葉物野菜が少なくなるため植物工場で作った野菜の売れ行きは安定している。しかし、問題は葉物野菜が多くなる冬場に定価が守れるかということ。「当社は採算性や利益を上げる点を重視しています。だからこそ多くの方に当社の野菜は無農薬で新鮮という商品価値を認知してもらい、そのためのプロモーションをしたい」と知念さんは話し、今後の工場増設計画も視野に入れながら、「新県産野菜」のPRを進めている。




株式会社 ぐしけん リサイクル事業部
TEL:098-933-2864






エコシステムで沖縄型植物工場
--NPO亜熱帯バイオマス利用研究センター



anettai01.jpg 植物工場の課題であるコスト削減に向けた実証研究を進め、「沖縄型植物工場」を目指しているのが琉球大学にあるNPO亜熱帯バイオマス利用研究センター( 理事長・上野正実琉大農学部教授) と、自治体関係者や企業で構成する沖縄デージファーム協議会だ。昨年度から総務省の補助を受け、ICT(情報通信技術)を活用した植物工場「中城デージファーム」と「北中
城デージファーム」を7月から稼働している。遠隔地でもパソコンで工場を管理するシステムの開発、高齢者や障がい者の雇用の場として県内普及を目指し、植物工場運営を進める。
 植物工場では、植物の成長に必要な光を与える蛍光灯や、蛍光灯から発生する熱を冷やすための空調施設など、大量の電気を使用する。以前からエネルギーコスト削減の研究が進められていたが、同センターが着目したのは沖縄ならではの「強烈な太陽光」。琉大が山口県の東洋鋼鈑株式会社と共同開発したのが光ダクトを使った採光システムだ。光ダクトは、太陽エネルギーから植物に必要な光のみを集め、電力を使わず野菜を育てる。さらに、空調施設を働かすため、サトウキビの搾りかすからでき
るバガス炭を使った集熱システムの研究も実用化へ近づく。
 琉大では2006年から植物工場の実験をスタートさせた。当初から研究している農学部の川満芳信教授は、「エネルギーコストを削減し、生産性を上げれば、植物工場が普及する」と強調する。生産性向上のため、従来の水耕栽培だけでなく野菜の根に一定時間ごとに水分や栄養分を補給する噴霧栽培、消毒した土壌を使った根菜類の栽培についても研究中だ。ICTや地デジによるモニターシステムは安定的管理が課題となっているが、上野教授は「大学の使命は人材育成にもあり、管理者を養成している。また、研究機関として技術を企業に提供する役割も担っている」と述べ、インターネットのeラーニングで実務を学ぶ人材を育成する。
 今後の課題はモニターシステムや省エネ技術の実用化、そして生産された野菜の販路だ。「障がい者や高齢者の雇用の場とするためには、販路を確保し、安定的な収入を得る必要がある」と上野教授は話し、新システムを構築するため研究を続けながら販路確保による沖縄型植物工場の本格的実用化を目指す。


NPO 亜熱帯バイオマス利用研究センター
HP:http://okinawa-dehjifarm.org/pfs/

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写真左)煙突のような形で、太陽光を室内に取り入れる光ダクト
写真右)遮光された室内には光ダクトから太陽光が入り、植物の成長に必要な光のみが届くようになっている。24時間の監視体制で植物の成長具合をチェック

 

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