ニュース

【57号特集】沖縄ファッション・イノベーション!

2019.03.25 Mon.


【57号特集】沖縄ファッション・イノベーション!



沖縄のファッション産業に新たなうねりが起きている。個性的なデザイナーらに
よる高感度なブランドが数多く誕生する一方、普遍的なアイテムに新たな付加価値をつけて商品展開するブランドも登場。マーケットの変化に応じた商品のつくり方・売り方や、新たなファッションビジネスのあり方などについて、沖縄ファッ
ション産業に息吹き始めたさまざまな「挑戦」をレポートする。


【ブランド発信の新プラットフォーム】
沖縄の知られざる優れたブランドを
〝アパートメント〟として発信
-APARTMENT OKINAWA-

一社では越えられない壁を
集合体のパワーで乗り越える

沖縄県内のアパレル(衣服)、アクセサリー・バッグなどの服飾雑貨や工芸品などのブランドを国内外に発信するプロジェクト「APARTMENT OKINAWA」。2017年にブランドでスタートして以来、県内外で急速に注目を集め、現在は27ブランドが名を連ねるまでに成長している。
プロジェクト名の「アパートメント」は、「さまざまな個性を持った人がそれぞれの部屋で独立した活動をしているひとつの建物」というイメージに由来するという。プロジェクト発起人のひとりであり、運営母体である有限会社ホーセルの代表取締役社長、金江幸一さんに発足の経緯を聞いた。
「当社は1986年からアクセサリーの企画制作・販売を行ってきました。2014年には『県内で優れたものづくりを続ける人を応援したい』という想いから、紅型・織物作家とコラボした蝶ネクタイ『HABERU(ハベル)』を発表したのですが、これがプロジェクト発足のきっかけになりました」
「HABERU」が県内外で話題となる中、金江さんは「沖縄には優れたデザインがたくさんあるのに、なかなか売上に結び付かないのは、世に出すための人手や機会が足りないからなのでは」と気づく。「その頃、県外の百貨店からポップアップイベント(期間限定の展示販売)の依頼があったんですが、当社単独でやるには催事スペースが大きかった。そこで県内の他ブランドと一緒に出たいと百貨店に伝え、当社からの声掛けでファッション系・工芸系の計10社を集めて出展したんです。この時の反応が想像以上によかったので、これをプロジェクト化したいと考えるようになりました」

県外各地の百貨店で好評を博し
知名度と売上は右肩上がりに

金江さんが参画ブランドに求めるのは「デザインに優れ、コンセプトやものづくりの品質がしっかりしているのはもちろん、定期的に新作の発表を行ったり、一定以上の生産・販売を着実に続けるなど、ブランドとしての基盤が確かなこと」だという。
「沖縄的なモチーフを優れたデザインで紹介するブランドがある一方で、独特の色使いやセンスでその人なりの沖縄を表現しているブランドもあります。かっこよさに惹かれて手にした商品が沖縄発のものだと知った人が、『沖縄のデザイン、いいな』『気になるな』と感じてくれたら理想的ですね」
プロジェクトとして出展実績を重ねるごとに評判が広がり、県外の百貨店からはイベントの引き合いが続々と入ってきているが、「現状では半分もこなせていない」と金江さんは嬉しい悲鳴をあげる。「参画ブランド各社の運営体力の向上と、当社のプロジェクト担当の対応力拡充も図りながら、これまで以上に多くの人に伝えていける体制を確立していきたいと思います」

※下記の画像は「沖縄ベンチャースタジオ57号」電子ブックにてご確認ください

「独創的」「エキゾチック」「伝統」「遊び」「カラフル」「新感覚」「モダン」... 27もの個性的なブランドの詳細はプロジェクトのウェブサイトを参照(写真は一部)

金江幸一さん。「沖縄には助け合いの精神や、お互いのノウハウを教え合うおおらかさがあるので、ライバルではなく仲間として一緒に成長していきたいですね」と語る。「APARTMENTOKINAWA」のプロジェクトロゴを冠した直営店舗を、県内の大型商業施設や県外の百貨店に構える計画も進行中

有限会社ホーセル
豊見城市豊崎1-328 ☎098-987-1591
https://www.apartment.okinawa



【〝 人とかぶらない 〟かりゆしウェア】
小ロット生産で、価値を創出
新しい沖縄モチーフの発掘にも意欲
-STARTEX-

社会人になった同級生からの要望で
「かっこいいデザイン」づくりに着手

沖縄のビジネスパーソンに不可欠のアイテムとしてすっかり定着した「かりゆしウェア」。れっきとした登録商標なのだが(※注1)、一般名詞と思っていた人も少なくないのでは。定番化が進むにつれ、「同じデザインのかりゆしウェアを着た人と街ですれ違った」というような話もちらほら聞かれる中、〝人とかぶらない〟かりゆしウェアを展開するブランドがある。玉木真次郎さんが代表を務める「STARTEX(スターテックス)」だ。
玉木さんは1996年開業の北谷町のセレクトショップ「VINYL MAGIC」を運営。オリジナルブランドと、独自の視点でセレクトした国内外ブランドのアイテムを取り扱い、多くのファンに支持されている。「10年くらい前から、当店の服を愛用してくれていた同級生たちに『仕事で着られるかっこいいかりゆしウェアをつくってほしい』と言われるようになりました。需要の高さを実感し、最初につくったのがシーサーをモチーフにしたかりゆしウェアでした」。2007年のブランド立ち上げを飾ったシーサーのかりゆしウェアは、今も定番商品として不動の人気を誇っているそうだ。

※注1「かりゆしウェア」...沖縄県衣類縫製品工業組合の登録商標。「沖縄県内で縫製を行うこと」「沖縄らしいデザインであること」が条件とされる。

売り切るのが「ウリ」
余剰在庫ゼロの優良経営を徹底

STARTEXのかりゆしウェアは、北谷町にある店舗と自社サイトでしか手に入らない。デザイン性の高さ、生地や縫製の品質の高さはもちろん、小ロット生産ならではの希少性も大きな特徴となっている。
「1アイテム〜枚程度しかつくりません。人気が出ても追加生産はせず、『売り切ることをウリ』にしているので、同じものを着ている人に出会う機会はほとんどないと思います」と玉木さん。新作情報を自社サイトで紹介するとすぐに予約が入り始める人気ぶりだそうだ。なお、STARTEXのかりゆしウェアについている「かりゆしウェア」のタグは、かりゆしウェアの製造に必要な設備と技術を有する者として沖縄県衣類縫製品工業組合に認められた証し。玉木さんも「このタグの力は大きいと思います。単なる『かっこいいシャツ』ではなく『かっこいいかりゆしウェア』だから、大事な仕事の場面でも安心して着られるというお客様は多いです」と、その意義の大きさを語る。
かりゆしウェアを手がけ始めてから、沖縄独特の風物や歴史にも興味がわいたという玉木さん。「ハジチ(入れ墨)や矢飾り(男児の誕生日のお祝いに魔除けなどの意味を込めて贈られる)の柄など、あまり知られていない沖縄のユニークなモチーフを探し出すのが楽しいです」。小ロットで売り切る〝ちょっとユニークなかりゆしウェア〟が、沖縄ファッション業界に新たな需要をつくりだしていることに注目したい。

※下記の画像は「沖縄ベンチャースタジオ57号」電子ブックにてご確認ください

2019年4月発売の新作かりゆしウェア。平均価格はメンズ半袖で1万3800円前後。小ロットゆえのやや高めな価格でも、ほとんどすべてが完売となる。ユーザーは県内のビジネスマンが大半を占めるそう

沖縄県衣類縫製品工業組合発行の「かりゆしウェア」のタグが信頼の証(写真上)。ハジチの模様をデザインした刺繍(右上)。襟の開き方が美しいオープンカラーの新作も(右下)

かりゆしウェアのほか、オリジナルブランドのスタイリッシュな衣類も並ぶ店内。仕事のためのアイテムを探すというより「ファッションを楽しもう」という感覚に浸れる売り場づくりも、ユーザーの心を捉えているようだ

「その時その時に自分が着たいものをつくってきた」という玉木真次郎さん。「年齢を重ねるとともに、ビジネスシーンに似合うかっこよさが分かるようになってきた」とのこと。人気の定番デザインも飽きられないよう、色や生地を少しずつ改良しながら長く着てもらえるように工夫している

STARTEX
北谷町北谷2-1-11 ☎098-926-2389
https://stxjpn.com



【「パターン(型紙)」の価値を再定義】
「着やすく、縫いやすい服」を叶える
優れたパターンを県内に普及させたい
-シンプル企画合同会社-

どんなに美しく優れたデザインも
パターン次第で売れ行きが変わる

服をつくるうえで欠かせないパターン(型紙)。そのパターンの価値を改めて定義し直し、沖縄で新たなビジネスモデルの確立を目指しているのが、シンプル企画合同会社の代表を務める安里輝美さんだ。
安里さんは東京の服飾学校のアパレル技術科を卒業後、アパレルメーカーに就職。パターンや縫製の技術、デザイナー補助の経験を得て帰沖し、県内の専門学校などで講師を務めたのち、2008年には自らのアトリエを設立。洋服や小物などのパターン作成から縫製までを手がけるようになった。
「パターンは、服など布製品をつくる時のいわば設計図です。デザイナーが描いたデザインを具現化しながら、着る人の着心地のよさや動きやすさを叶えるには、パターンのつくり方が重要になってきます。さらに、縫う人が縫いやすいようにパターンがつくられていなければ、どんなに優れたデザインでも縫製が難しくなり、生産コストに響いてしまうんです。パタンナー(型紙をつくる技術者)が少ない沖縄で、パターンの重要性を改めて伝え、アパレル業界を活性化したい。そんな想いから、工業用パターン販売の事業化を考えるようになりました」
パターン制作依頼が増え、安里さんはアトリエを2015年に法人化。アパレル専用のパターンカッティングプロッタ(型紙をデータ通り出力しカットまで行う機器)を導入し、飛躍的な効率向上を果たす一方で、技術を買われて縫製の依頼も増加。スタッフとともに縫製業務に追われながらも、パターン販売の計画を温めていった。

新たな組合の設立によって
アパレルのつくり手を多角的に支援

縫製依頼で持ち込まれるパターンには、縫いづらいもの、着心地や使い心地が気になるものが少なくなかったという。そこで安里さんは縫製の受託を抑え、改めてパターン制作・販売に本腰を入れることを決意。「一般的な市販の型紙はまず別の紙に転写し、カットする必要があります。そこで私は、縫いしろ付き・カット済みのパターンをパッケージ化しました。初心者でもすぐ縫えて、回数をこなせば技術も身に付くように配慮しています」。安里さんの技術と想いが込められたパターンは、購入した人から「縫いやすい」「丈や生地を変えるなどのアレンジもしやすい」と喜ばれているそうだ。
2017年に立ち上がった「アパレル沖縄生産協同組合」でも重要な役割を担う安里さん。「組合では、生産性の向上を妨げる縫製段階での滞りの原因として『縫製従事者の不足・パターンや生産管理表の知識不足・アパレルメーカーに関する情報の不足』を挙げています。これらを解消して、県内のアパレル業界全体の底上げを図りながら、沖縄県産の魅力的なアパレル製品を増やしたい。そしてそれを国内外に発信していきたいですね」と意欲を語ってくれた。

※下記の画像は「沖縄ベンチャースタジオ57号」電子ブックにてご確認ください

「パターンの線の引き方ひとつで、動きやすさや着心地が変化する」と安里さん。パターン技術者の養成にも力を入れている

アパレル専用のパターンカッティングプロッタ(写真左)は県内で所有しているところが少ないため、業界関係者からパターン作成を依頼されることも多いそう

同じパターンからいくつものバリエーションに展開でき、完成品の販売を目的とした商用利用も可能なのが特徴。パターン購入は無料カタログもしくはウェブサイトから完成品の洋服の着用イメージを確認し、気に入ったパターンを注文する仕組み

安里輝美さん。「お気に入りのデザインの着心地よい服を着ることで、着た人にハッピーになってもらいたい」という願いのもと、着る人の要望にピッタリ合うパターン、そして縫うのも楽しくなるパターンを起こす達人だ。裁縫好きな人のためのワークショップなども開催し、アパレル従事者の裾野の拡大も目指している

シンプル企画合同会社
うるま市みどり町1-4-13 ☎098-974-4760
http://thepattern.jp/