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【55号特集】羽ばたけ、ウチナー技能者たち 〜若手の技を磨く沖縄企業の挑戦〜

2018.10.17 Wed.


【55号特集】羽ばたけ、ウチナー技能者たち
〜若手の技を磨く沖縄企業の挑戦〜



11月2日~5日に開催される「おきなわ技能五輪・アビリンピック2018」。23歳以下の技能者による「技能五輪」の全国大会と、15歳以上の障害のある人が技能を競い合う「アビリンピック」の全国大会が同時開催され、沖縄での開催は初となる。そこで今回は6名の県代表選手たちと、彼らを支える人々・組織に話を伺い、技能の向上がビジネスにもたらす好影響についてレポートする。

「技能五輪」「アビリンピック」の
意義と熱量を確かめに、ぜひ会場へ

技能五輪全国大会は、青年技能者が日本一を競うことで技能レベルの向上を図ることなどを目指して毎年開催され、国際大会(隔年開催)の選考会も兼ねている。全国アビリンピックは、障害のある人が技能を競い合うことで職業能力の向上を図ると同時に、企業や社会一般からの理解と認識を深め、雇用の促進を図ることを目的に毎年開催されている。今大会では沖縄から過去最多の140名が全国の精鋭と技を競い合う。会場では県代表選手がメダルを目指し奮闘する姿を間近で見学できる。ぜひ観覧・応援に訪れてほしい(詳細はコラム参照)。


【技能五輪:配管】
金メダルを獲得し
世界大会にチャレンジしたい
-三栄工業株式会社 屋宜宣好さん(19歳)-

屋宜さんは2017年の技能五輪全国大会で銅メダルを受賞した実力の持ち主。さらなる高みを目指す入社2年目の彼を職場でサポートするのは、上司の照屋保さんだ。

●過去大会への出場経験と
今大会に向けた取り組みについて

屋宜: 初出場は2年前、南部工業高校3年生の時です。出場前には技能五輪メダリストが指導する出前講座に参加して、みっちり技を学んだおかげで、敢闘賞を受賞しました。今大会に向けた練習には8月初旬から取り組んでいます。毎日会社の朝礼に出席した
後、高校の実習室に行き夕方6時頃まで練習します。金メダルの獲得を目指して、苦手な作業を繰り返し行っています。

●会社のサポート体制と
出場することのメリットについて

照屋: 当社の主な業務は大型商業施設やホテルなどの空調設備や給排水衛生設備、水道設備工事の施工管理です。建物の隅々に水を運ぶ配管は、施工に問題があれば水漏れなどのトラブルを引き起こすため、常に高い技術が求められる仕事です。
屋宜が担当している業務は現場技術者、つまり職人さんの管理が中心です。技能五輪への出場で技術者としての技能を磨くことで、職人さんの仕事をより理解できるようになってきたようです。職人さんが仕事をしやすい環境を考えられるようになったのは、大きなメリットだと感じています。
この業界も高齢化が進んでいるので、技能五輪で屋宜が活躍することで配管の仕事の面白さに興味を持つ若い人が増え、進路に影響を与えてもらえればと思います。

●今大会への抱負や意気込みについて
屋宜: 配管部門の競技では寸法通りに仕上げることや見栄えの良さ、時間を守ることなどが求められます。さらに今回は、国際技能競技大会に準じているため課題図面の一部が白紙になっていて、当日支給される材料を全部使ってその場で即断して仕上げなければなりません。それには普段の練習で多くの課題をこなす必要がありますが、練習量にかけては誰にも負けないと自負しています。金メダル、本気で狙っていますから。

※下記の画像は「沖縄ベンチャースタジオ55号」電子ブックにてご確認ください

前回大会会場で課題に臨む屋宜さん。多くのギャラリーや審査員の視線にさらされる環境でもまったく緊張しないそう

照屋保さん(左)と屋宜宣好さん。社内には銅メダルを獲得した際の課題の配管が展示されている

三栄工業株式会社
那覇市港町3-2-8 ☎098-868-0191
http://san-ei-kogyo.com


【技能五輪:日本料理】
地元で金メダルを獲得し
周りの人に恩返ししたい
-ダブルツリー ヒルトン那覇首里城 當山咲良さん(23歳)-

日本料理部門に出場する當山さんは、沖縄県勢の同部門過去最多となる4度目の出場。料理長の山川宗広さんが日々指導にあたり、自身初のメダル獲得を目指す。

●過去大会への出場経験と
今大会に向けた取り組みについて

當山: 琉球調理師専修学校に在学中の2015年に初めて出場しました。県内では日本料理にチャレンジする人がいなかったので、私が沖縄から初めて、学生としても初めてこの部門への挑戦となりました。次の年はリゾートホテルに勤務しながらの出場。そして3度目の前回大会は現在の職場から出場し、敢闘賞を受賞しました。
受賞はしたものの実力を発揮できなかったことが悔しくて、大会の翌月からすぐに次に向けた練習を始めました。現在は毎日午後2時半から5時半まで、職場の厨房の仕込みがない時間に特訓を行っています。

●会社のサポート体制と
出場することのメリットについて

山川: 県内に4つあるヒルトンホテルのうち、日本料理店があるのは当ホテルだけです。日本料理は四季を重んじた繊細な盛り付けや、食材を生かした味付けが特徴で、当店は地元の女性客の利用が多いですが、近年は欧米からの旅行客も増えています。
當山は2017年の入社時、すでに十分な実力を備えていました。ただ日本料理はわずかな違いで見栄えが左右される繊細さがあるので、毎日細かく指導し、日々の業務を通して腕を磨いてもらっています。
当店の厨房は當山が紅一点で、他は歳から代までの男性ばかり6名。皆で彼女を応援し、協力しています。9月からは敢闘賞受賞の実力をアピールするため、當山が考案した「咲良(さくら)弁当」をランチタイムに提供していますが、女性料理人がつくったヘルシーなメニューとして喜ばれています。彼女の活躍は店にとってもいい刺激になっていて、料理人たち全体の質の向上にもつながっていると思います。

●今大会への抱負や意気込みについて
當山: 地元開催の今回こそは、と金メダルを目指しています。お世話になった方々や温かく見守ってくださる先輩方への恩返しのためにも頑張ります。今回は専門学校生を含めた7名が沖縄から出場予定で、競技会場となる専門学校では県外から指導者を招いた本番さながらの模擬大会も行われます。自分の技を磨きながら、先輩として若い人たちにも情報を伝えていきたいですね。県内でも日本料理を目指す人が増え、仲間ができると嬉しいです。

※下記の画像は「沖縄ベンチャースタジオ55号」電子ブックにてご確認ください

日本料理「富士」で2018年9月から提供されている「咲良(さくら)弁当」。美しくヘルシーなメニューは特に女性客に好評だ

前回大会会場での當山さん。「審査員や観客の視線が集まるとワクワクする」そうなので、今大会もぜひ会場で大きな声援を送ろう

當山咲良さん(右)は琉球宮廷料理に興味があり、将来的には当時の琉球の味を再現する夢を抱いているという。厳しく温かく指導してくれる料理長の山川宗広さんと

ダブルツリーbyヒルトン那覇首里城
那覇市首里山川町1-132-1 ☎098-886-5454
https://www.doubletreeshuri.jp



【技能五輪:造園】
ふたりで力を合わせて
メダル獲得を目指します
-金秀建設株式会社 當間元士さん(19歳)-
-有限会社緑新開発 玉那覇兼吾さん(22歳)-

當間さんと玉那覇さんは前回大会の際に出会い、今大会は造園の課題にペアを組んで取り組むことになった。取材に訪れた日、猛暑の中で練習に打ち込むふたりを見守っていたのは當間さんの上司、上原健さんだ。

●過去大会への出場経験と
今大会に向けた取り組みについて

當間: 私は南部農林高校出身です。高校時代に造園の面白さに気づき、金秀グループの造園会社を経て現在は金秀建設で仕事をしています。入社1年目から技能五輪に出場し、2度目の出場となった前回は敢闘賞を受
賞でき、ホッとしました。

玉那覇: 私は中部農林高校を卒業し、父が経営する緑新開発に入社して造園や街路樹の植栽などに携わっています。技能五輪には
前回大会に初めて出場しました。
當間: 8月中旬から本格的な練習を開始しました。所属会社の諸先輩のほか、出身高校の先生方や県内外の造園会社のベテラン技術者の方々にご指導いただいています。
玉那覇: 現在は毎日朝9時から夕方6時まで、練習場所で特訓しています。今回の課題は6メートル×4メートルの作庭で、制限時間内に平面図と断面図通りにいかに正確に、美しく仕上げられるかを競います。
當間: 石積みや石貼り、竹垣の作成、草木の植栽など、幅広い分野で高い技術が求められる上、工具の取り扱い方や安全性への配慮、作業現場の清潔さといった作業態度も採点されるので、その点にも留意しながらふたりで練習に励んでいます。

●会社のサポート体制と
出場することのメリットについて

上原: 当社は総合建設会社としてさまざまな公共工事や民間工事に携わっており、當間が所属する部門では公園や街路植栽工事、リゾート関連施設等の植栽管理なども担当しています。全国の優れた技能者と技を競い合う技能五輪への参加は、技術の向上はもちろん本人のモチベーションアップにもつながると考え、全社を挙げて応援しています。
造園業界も技術者の高齢化が進み人手不足に悩んでいますが、若い彼らが活躍してくれることで、業界全体の質の向上や活性化につながることを期待しています。

●今大会への抱負や意気込みについて
當間: 技能五輪ではシビアな制限時間の中で、作業の正確性を求められます。前回は審査員の視線などを意識して集中できず、普段通りの力が出せなくて悔しい思いをしました。でも過去大会への出場で効率的に仕事をこなす基本的な動き方が身についたし、自分で考える力や工夫する習慣も身についたと実感しているので、3回目となる今回はメダル獲得を目指して課題取り組んでいきます。
玉那覇: 技能五輪の課題には、沖縄ではあまり使われない石組みや石貼りなどがあります。県外の技術者から直接学ばせてもらい、身についてきた実感があるので、自信を持って臨み、よい成績を収めたいです。

※下記の画像は「沖縄ベンチャースタジオ55号」電子ブックにてご確認ください

石積みの際にはその場で石を割り、大きさを調整することも。今回は開催地である沖縄県産の琉球石灰岩(1トン)を用いた野面積みも課題のひとつとなっている

左から上原健さん、當間元士さん、玉那覇兼吾さん。6メートル×4メートルの囲いを組んだ練習場所で、日々汗を流して訓練に励んでいる

金秀建設株式会社
西原町字小波津567 ☎098-946-4633
http://kanehidekensetu.com
有限会社緑新開発
沖縄市池原2-10-35 ☎098-939-4310
http://ryokusinkaihatsu.com

※紙面で紹介した3部門の部門別競技内容
【配管】配管は上・下水道、給・排水、衛生、空調、冷暖房など、安全で快適な生活を営むために大切なライフラインを施工する技能。競技では、実務に即し、壁取り付け組み立てを行う
【日本料理】季節の食材の持ち味を生かし、巧みな包丁さばきで調理する日本料理。多くの器を使い分け、盛り付けも空間をもって美とするなど繊細さが求められる。競技の課題では基礎的な調理技能を重視し審査される
【造園】生活空間に小さな大自然を作り出す造園の技能。競技は2日間で一定の区画に石積み、石貼り、樹木や季節の草花の植栽、芝生貼り等を行う



【アビリンピック:表計算】
「金以外なら引退」の覚悟で
年々難しくなる課題に取り組む
-全保連株式会社 宮里政也さん(38歳)-

表計算に出場する宮里さんは、2017年の努力賞受賞をステップに、今大会では金メダルを目指す。日々の業務のかたわら、周囲が驚くほどの猛勉強に励む宮里さんを支えるのは、上司の御幡一浩さんだ。

●過去大会への出場経験と
今大会に向けた取り組みについて

宮里: アビリンピックへの初めての出場は2016年、上司のすすめがきっかけでした。沖縄大会で金賞を受賞し、山形で開催された全国大会に進んだのですが入賞できず、本当に悔しい思いをしました。
2017年は助成金を受けてパソコン教室に通ったり、参考書の問題を100回繰り返して解いたり、自分なりに猛勉強して臨みました。しかし結果は、銅メダルに次ぐ努力賞。これだけやってもか...と一瞬下を向きかけましたが、ならばさらに上を目指すぞ!と翌日から勉強を始めて、現在に至ります。ちなみに、この一連の勉強の成果で、8つもの関連資格も取得しました。

●会社のサポート体制と
出場することのメリットについて

御幡: 賃貸住宅の家賃保証サービスを行う当社では、障がいのある人の雇用に長年取り組んでいます。宮里が在籍する印刷室は、社員8名のうち5名が障がいを持つ人です。ここでは月に最大5万部の印刷物の受注から発送までを行っており、業務管理のために表計算ソフトを活用しています。
宮里が努力賞を受賞した際は、職場全体で喜びを分かち合いました。宮里の勉強ぶりには他のメンバーも刺激を受けていると思います。「自分にもできるだろうか」という葛藤が「チャレンジしてみたい」という意欲に結びつけば、会社としてもその挑戦を後押ししたいと考えています。

●今大会への抱負や意気込みについて
宮里: 今大会から課題が大幅に難しくなる予定です。統計の要素が加わり、問題を読み解く日本語読解力も求められるので、現在はそこを中心に勉強を重ねています。私の姿を見て、身体・精神・知的障がいを持つ人が「自分も負けられない」と挑戦心を持ってくれたら嬉しいです。自社だけでなく他社の方にも良い影響を与えていきたいですね。

※下記の画像は「沖縄ベンチャースタジオ55号」電子ブックにてご確認ください

アビリンピックに向けた猛勉強の“副産物”として宮里さんが取得した資格はなんと8つ! 現在も今大会の課題に含まれる統計を学ぶため、「MOS統計スペシャリスト」の勉強に取り組もうかと思案中とのこと

宮里政也さん(左)と御幡一浩さん

全保連株式会社
那覇市久茂地2-22-10 那覇第一生命ビルディング5階 ☎098-911-9078
https://www.zenhoren.jp/



【アビリンピック:ホームページ】
メダリストの直接指導を受け
〝キレイな〟コードで上位入賞へ
-障がい者ITサポートおきなわ 奥浜彩加さん(35歳)-

今大会が初出場となる奥浜さん。指導するのは前回大会の銅メダリスト、山川朝教さんだ。現在は独立し個人事業主として活躍する山川さんから奥浜さんへ、競技で戦う上での戦術と心構えが受け継がれている。

●過去大会への出場経験と
今大会に向けた取り組みについて

奥浜: 2018年8月、初めて出場したアビリンピックの沖縄大会で思いがけず金賞を受賞し、今大会の出場権を得ました。職場の元先輩で、現在は独立された山川さんの指導を受けたことが金賞受賞の大きな後押しになったと感じています。
今大会に向けては山川さんと県外のメダリストの方の言葉をヒントに、「課題以上のことをやる」をテーマに練習しています。課題はどの選手もほぼ同じレベルでクリアしてくるので、プラスアルファの部分が重要になります。たとえ加点にならないとしても、持っている知識や技術をなるべくたくさん組み込めるようにしたいです。
山川: 障がい者ITサポートおきなわではデータ入力・集計や横断幕・垂れ幕などの大判印刷、名刺作成などのサービスを行っています。私は2017年11月までの2年3ヵ月間、ここに籍を置き、アビリンピック全国大会には2回出場しました。職場の皆の協力や応援も受け、2016年は努力賞、2017年は銅メダルを獲得しました。現在はフリーランスとして活動しながら、後輩の指導にあたっています。大会に出るという目標を持つことは、技術の向上や知識の習得に非常に効果的です。そこに実務での経験が加われば、さらに強い。お客様への提案力につながるし、競技でも奥浜さんの言う「プラスアルファ」につながっていくと思います。
奥浜: やれることを全部やり、まずは山川さんに追いつきたいですね。そしてすべての基本としてコードはキレイに、見やすく書くことを心がけたい。それが結果としていい成績につながればいいなと思います。

※下記の画像は「沖縄ベンチャースタジオ55号」電子ブックにてご確認ください

2018年8月に開催された地方アビリンピック(沖縄大会)には同所から7名が出場。奥浜さんを含む2名が金賞、1名が銀賞を受賞するという優秀な成績を収めた

奥浜彩加さん(右)と山川朝教さん

障がい者ITサポートおきなわ
浦添市内間5-4-3(101) ☎098-961-6715
http://ict.okinawa


INFORMATION
技能五輪・アビリンピックへの
沖縄県の取り組みと支援策

沖縄県では今を遡ること4年前の2014年7月に、2018年開催の技能五輪・アビリンピック全国大会開催地として名乗りを上げた。沖縄開催の決定後は大会準備委員会を設置し、2016年には推進協議会を設立。その後は年々、事務局の人員体制を拡充しながらさまざまな支援策を実施し、沖縄開催の成功に向けた準備にあたってきた。
その中でも特に大きな成果を挙げている支援策が「選手の育成強化」だ。一企業(団体)あたり20万円の「助成金」給付をはじめ、過去大会メダリスト等の指導者を招へいして選手及び指導者を育成する「出前講座」、集客施設(イオンモール沖縄ライカム・サンエー那覇メインプレイス等)で行う「合同公開練習会」を実施。これにより、2015年以前は一ケタ台だった沖縄からの全国大会出場者数は大幅に増加(グラフ参照)。今大会は140名の大選手団となった。
「技能職の持つ大きな可能性、そして働くことの意味や喜びを発見できる大切な機会として、今大会を活用してほしい」と話すのは、県技能五輪・アビリンピック準備室で広報を務める新垣泰子さん。「特に沖縄の次代を担う若い人に観てほしいので、ぜひご家族連れでお気軽に観戦にお越しいただきたいです。観るだけでは理解しづらい競技の流れやポイントを高校生等が説明する競技解説ガイドも予定しています。今大会は全会場で延べ約15万人の来場を見込んでおり、各会場では競技だけでなく沖縄の魅力を体感できる催事や観光物産展等も実施します。ぜひお近くの会場に足を運び、選手たちへの声援をよろしくお願いいたします」

※コラム内の下記の画像は「沖縄ベンチャースタジオ55号」電子ブックにてご確認ください

メダリストによる出前講座

公開練習会でのひとコマ

沖縄からの全国大会出場者数(図)

 

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