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"付加価値"で世界と勝負! 沖縄ITベンチャーの挑戦 ~続々・アジア視点で拡げるビジネスの可能性~

2016.03.22 Tue.


"付加価値"で世界と勝負! 沖縄ITベンチャーの挑戦
~続々・アジア視点で拡げるビジネスの可能性~



マルチメディアアイランド構想から始まり、IT津梁パークの整備や海底ケーブルの敷設など、情報通信分野でのインフラ構築が進む沖縄。コストメリットや雇用創出を期待してのオフショア・BPO的取り組みが先行する中、近年は高付加価値サービスを独自開発して県外・海外へ発信しようとする動きも見えてきた。「アジア視点で拡げる」シリーズ最終回となる今回は、アジア市場を開拓しようとする県内IT企業の挑戦と、その未来展望をレポートする。



何の変哲もないバーコードが
国境を越えた購買促進ツールに
《株式会社Payke》

 世界中で流通するほとんどの製品に付けられている商品バーコード。この"当たり前"のインフラに新たな価値と可能性を与えるサービスを編み出し、展開しているのが株式会社Payke(ペイク)だ。
 創業者であり代表取締役CEOを務める古田奎輔さんは東京都出身の22歳。2013年に琉球大学へ入学してすぐ、生活費のためアルバイトを探したが時給が東京と大きく違い、驚いたという。「だったら自分で起業して稼ごうと、5月にはEC(電子商取引)事業を興しました。当初は中国から商品を仕入れて日本国内に販売していましたが、その際にバーコードの発行が必要でした。発行権を申請し、商品を登録していく中で、バーコードの意味と発行元、そしてメーカー側の管理方法などを理解していきました」
 その後、沖縄県産品を中国に輸出する県内商社と業務提携し、沖縄県の補助事業で中国向けのプロモーションも経験した古田さん。しかし県産品の魅力が中国の一般消費者に伝わっているか実感が得られず、歯がゆい思いをしたという。「ECでは商品情報、商品の良さをいかに伝えるかで明暗が分かれます。商品毎のこだわりを知れば知るほど、『これが伝われば売れるのに』と感じるようになりました」
 世界中の商品が抱える「いい商品なのに魅力が伝わらない」というギャップをなくしたい。これをビジネスにするなら、最初のターゲットは誰だろう。古田さんの頭に浮かんだのは、訪日外国人観光客だった。「言葉も文化もわからない。でも日本は大好きで、日本のモノが買いたい。そんな観光客、特に急増していた中国語圏からの観光客をまず対象にしようと。彼らがいわゆる"爆買い"アイテムしか買わないのは十分な情報がないからで、それが欠品になれば販売機会を逃がすことになる。売り場には"爆買い"アイテム以外にも良い商品があると直接伝えられたら、状況は大きく変わるはず」。その時に閃いたのが、バーコードを活用するアイデアだった。

マネタイズ(収益事業化)を進めつつ
マーケティングツールとしての機能を強化

 多言語対応ショッピング支援サービス「Payke」は、スマートフォンで商品バーコードをスキャンすると、自動判別した端末の設定言語で商品の情報が表示されるしくみ。メーカー側としては既に商品に付いているバーコードをそのまま利用できるため簡単かつ低コストで導入でき、ユーザーの属性やスキャンされた位置などに応じて個別の販促・PR情報も表示できる。「現在、県内外約100社の協力を得て、沖縄で購入できるほぼすべての土産品への対応を進めています」と古田さん。
 各メーカーには無料管理アカウントが発行され、商品情報の登録や編集の他、ユーザーの利用状況がわかるスキャンデータの追跡もできる。「ユーザーがアプリをダウンロードし、利用開始する際にアンケートを入力してもらうのですが、その回答とGPSの位置情報により、どの店でどんな人がどの商品をスキャンしたか、国籍、性別、年齢まですべてデータで見ることができます。このスキャンデータを分析すれば、『どこの店舗のディスプレイが外国人に魅力的に映っているのか』といったことまでわかります」。さらに、商品ページの情報をもっと充実させたい、スキャンデータもより詳細なものを活用したい、広告効果を測定したいといったニーズに応える有料アカウント制度も用意。有料アカウントではPR動画の埋め込みや取扱説明書のアップロードなども可能になる。この他、小売店スタッフ向けに外国人接客・販売促進・商品知識などの補完を行う専用サービスも展開中だ。

世界のインバウンド需要を視野に
まずはアジア展開をにらむ

 沖縄での展開と同時進行で、利用エリアを国内各地へと広げる動きも進めている古田さん。「まずは日本で販売されているすべての商品の情報を集積する。そしてエリアも国内の観光地からアジアへと広げていくことを目指します。バーコードは世界共通ですし、スマートフォン普及率はほとんどの国が日本以上ですから土台はできている。アジアの店頭に並ぶ多くの日本製品がどのような商品か、現地の人々にわかりやすく伝えられる『Payke』を使って、日本製品の消費促進に貢献できればと思います」。世界規模での広がりの可能性を秘めたPayke。どんな進展を見せてくれるか、楽しみだ。


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アプリ「Payke」の使用シーン。商品バーコードをスキャンすると、情報が母国語に合わせて表示される。外国人観光客の商品選びや購入をサポートするとともにメーカーや小売店スタッフの負担も軽減する

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アプリのアイコン。多くの情報を詰め込めるという意味を込めた

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2016年2月に福岡県で行われた九州・山口ベンチャーマーケットにおいて、9県から有望な企業が多く集まる中、九州・山口ベンチャーアワーズ大賞(最優秀賞)を受賞

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バーコードの新たな可能性を見いだした古田奎輔さん。社名とサービス名は「pay」と「take」を組み合わせた造語によるもの。将来的には決済サービスの導入も見据える

株式会社Payke
那覇市銘苅2-3-1 なは市民協働プラザ内
なは産業支援センター411室
☎098-943-7308
http://payke.co.jp



コンテンツ産業の活路はアジアへ。
台湾でアプリが売れる仕掛けとは
《株式会社 ブリブサー》

 自社開発ゲームアプリをアジアで売り出すプロモーションに挑戦したのは、株式会社ブリブサー。スマートフォン向けゲームアプリの開発を行うITベンチャーだ。
 代表取締役社長の渋川浩史さんが東京のインターネット広告代理店に在籍していた際、当時この分野の先端技術があった沖縄で関連会社を設立することが決まり、渋川さんは営業所長として2007年に沖縄に赴任。4年ほどで年商10億円、従業員100名の規模にまで成長した。
 急成長の要因は、と尋ねると渋川さんは「沖縄の若い人たちのポテンシャルの高さです」と即答。「一般的に多い東京本社主導型ではなく、沖縄と東京が対等に連携しサービスを開発するというスタイルも、沖縄の人材が本来持っている能力を発揮するのに合っていたのかもしれません」。彼らの力を借りながら沖縄で新しいことをしたい、と考えていた渋川さんの独立を会社も後押ししてくれ、ブリブサーが始動したのが2013年のことだった。

"リッチ"vs"暇つぶし"
二極化するゲーム市場で生き抜く

 ゲーム開発の方向性は世界的に二極化が進んでいるといわれる。精細なグラフィック表現によるリッチなコンテンツを追求した、ゲーム専用機やパソコンなどで遊ぶコア層向けのものと、スマートフォンなどで暇つぶしに気楽に遊ぶライト層向けのもの。コア層向けとライト層向けとでは開発に要する予算も時間も技術も全く違うが、同社ではその双方を視野に入れている。「例えば暇つぶし系のアプリでもギリギリまでリッチなグラフィックを実現できればよりユーザーの興味を引ける。そのために開発環境を整え、技術革新にも取り組んでいます」と渋川さん。そうすることで数多あるアプリの中から選ばれる価値が生まれるというわけだ。
 さらに渋川さんは、沖縄から優れたプログラミング系・CG(コンピュータグラフィック)系人材を輩出するための取り組みも進めている。「琉球大学工学部にゲーム開発者を支援する国際的な組織の沖縄支部を立ち上げたり、2016年度からゲーム開発者向け講義を新設する沖縄国際大学産業情報学科とも連携を取っています」。沖縄の学生が最新技術に触れる機会を増やす努力の一方で、彼らがITベンチャーで仕事をしたいと夢を描けるよう、会社としての実績向上にも油断なく取り組んでいる。

公的機関の支援を活用し学んだ
台湾で"売れる"ための仕掛け

 しかし、ゲーム・アニメ・漫画などのいわゆるコンテンツ産業は国内需要が伸び悩み、熾烈な淘汰の時代に入っている。「『アジアに出ないと死ぬ』といわれるほどの冷え込みぶりで、各社生き残りをかけて海外戦略に取り組み始めています」
 渋川さんは海外進出の第一歩として台湾に目を向けた。2014年、まずは手始めとして台湾IT企業との技術交流や共同開発に着手。そして2016年1月には沖縄県の新分野海外展開支援事業を活用し、自社アプリ「タワーオブドアー」の台湾でのプロモーションにチャレンジした。
 台湾のスマートフォンシェアは日本や中国と違ってアンドロイドOSが8割、iOSが2割。ツイッターよりもフェイスブックが人気で、LINEは日本同様に流行中。こうした台湾特有の傾向を熟知した現地インターネット広告業界大手のVpon社をパートナーに選び、限られた予算を適切に割り振って広告展開した結果、わずか1週間ほどで3万ダウンロードを獲得。アドベンチャーゲーム部門で1位、無料アプリ全体の中でも30位台に入るなど上々の成果を挙げた。さらに渋川さんが注目するのは、台湾での事業展開の収益性の高さだ。「1ダウンロードを獲得するためにかかる広告費用が、国内の40%程度で済む一方、収益は国内の30%減程度。マーケティングコストを抑えて収益率を高く保てるため、魅力は非常に大きいです」
 海外向けにアプリを発売する場合、コンテンツのローカライズ・カルチャライズ(言語対応や現地の価値観や風習への対応)と的確なマーケティングができなければ、リリースしても結局誰にもダウンロードされないままになると渋川さんは話す。「今回の台湾では、言葉を使わずに遊べるノンバーバル(非言語)系のアプリを選び、市場を熟知した現地パートナーと一緒にマーケティングを進められたので、うまく成果を挙げられたのだと思います」
 今回の経験をふまえて渋川さんは今、「沖縄に、国内コンテンツ産業のアジア進出・マネタイズの出口をつくる」という新たな指標を描き始めているという。地理的優位と若者の潜在能力、これらを備えた沖縄を舞台に、同社の輝きはこれからもひときわ増していくだろう。

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「タワーオブドアー」(上)は台湾のAndroidアドベンチャーゲームランキングで1位を獲得。一方、リッチ系の自社タイトル「進撃の巨獣2」(下)はゲーム専用機向けのUnreal Engine 4で開発し、スマホ向けとは思えない画質が話題に

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渋川浩史さん。受託の開発業務も受ける一方で、アプリの自社開発にこだわる。業界の拡大・発展を図る沖縄ゲーム企業コンソーシアムの理事でもある

株式会社ブリブサー
那覇市前島2-12-12 兼陽ビル3F
☎098-988-4295
http://bribser.co.jp



日本特有の〝安心・安全〞を
海外展開の大きな武器に
《レキオスソフト株式会社》

 2002」年の設立以来、主に地震・津波などの防災システム開発の第一線に携わってきたレキオスソフト株式会社。そこで培った技術を結集したコンテナ型仮想化ミドルウェア「Lexi(レクシィ)」をはじめとするソフトウェア開発など、高い技術力で世界の防災に貢献すべく、着実な成長を続けている。
 同社は、沖縄県出身の技術者である代表取締役社長の柴嵜淳さんが千葉県で単身起業したITベンチャー企業。東京への本社移転の後、2012年に那覇支店を開設、現在は札幌、水戸と国内に計4つの拠点を構えるとともに、台湾に台北本社、高雄支店を置き、国内に約80名、台湾に約25名の社員を擁する。2015年には那覇市に本社を移転した。
 柴嵜さんは台湾進出の経緯をこう話す。「那覇支店を開設した翌年の2013年、それまで開発を続けてきた地震・津波関連システムを台湾に導入できないかと、台北に子会社を設立しました。無謀にも、人脈はおろか知り合いもいない状態だったのですが、沖縄に拠点を持っていたことが幸いし、沖縄県の台北事務所や商工労働部、産業振興公社が各所へ橋渡しをしてくれました。その流れで高雄市の経済発展局局長が仲介人となり、日本のIT企業で初めて高雄市に進出することができたのです」。高雄市には日系の大手製造会社が多く進出しており、そのうち2社との取引が実現。基盤となる実績を積みながら、次の目標へと着実に歩を進めている。

海外で大きな助けとなったのは
ウチナーンチュの人脈とパワー

 台湾進出で改めて気づかされたのは、沖縄の企業である強み。それはウチナーンチュの人脈の力だという。「沖縄生まれというだけで、多くの方が一生懸命に動いてくれた。その動きがなければ、あの人脈を作るのにどれだけ時間とお金がかかったかわかりません。これは2015年にブラジル・サンパウロを訪れた時も同じでした。沖縄県人会の方が動いてくれ、いきなり大企業のトップとも会えただけでなく商談につながったり、皆さん本当に親身になってくれる。もし台湾進出を迷っている方がいるなら、実際に台北事務所に出向いてみてはと思います。現地の感触をつかみつつ、協力体制がこれだけあるとわかれば、大いに勇気が湧くはずです」。アジアでの次の進出先も「市場可能性があり、かつ沖縄県の事務所があるシンガポールですね」と言い切る柴嵜さん。人脈ありきではなく、ビジョンに突き動かされて海外ビジネスに挑み続ける人だからこその説得力がある。

メイドインジャパンの確かな技術と
繊細な心遣いが成功のカギ

 2016年、同社は大きな飛躍の時を迎える。これまで国内で積み重ねてきた気象・地震関連の開発実績が評価され、日本電気株式会社(NEC)と共同開発している早期地震検出用ソフトウェアを、アジアで展開していく話が具体的に進んでいる。「これを海外実績の大きなステップとして、さらに高次のシステムの輸出へと展開していきたい」と柴嵜さん。その一方で、もっと大事にしたい心構えがあるという。「日本の優れた技術も、そのまま持っていくだけでは海外では通用しない。日本人の持っているきめ細かな精神や安心・安全に対する文化を広めることで、ひいては世界平和実現の一翼を担えたらと思います」。高い技術と細やかな心。相手国がどこであったとしても、ここから生まれる信頼関係こそが、海外での展開に不可欠なものなのかもしれない。

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2013年、台北に子会社を設立した際の模様。オフィスは台北市中心街にある

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台湾交通部中央気象局とNECが共同実証を行うと発表された地震の早期検知にもソフトウェア開発面で参画する予定だ(画面写真は緊急地震速報をPCに表示するNEC製のソフトウェア「震前大使(しんぜんたいし)」より)

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ブラジル訪問時の様子。現地沖縄県人会やWUB(世界うちなーんちゅビジネスアソシエーション)ブラジルのメンバーと

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柴嵜淳さん。WUBの支部であるWUB台湾の会長も務めるなど、その沖縄県人ネットワークは幅広い

レキオスソフト株式会社
那覇市久茂地1-7-1 琉球リース総合ビル8F
☎098-963-9358
http://www.lequiossoft.co.jp

 

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