ニュース

メイドインジャパンを沖縄からアジアへ ~アジア視点で拡げるビジネスの可能性~

2015.09.28 Mon.


メイドインジャパンを沖縄からアジアへ
~アジア視点で拡げるビジネスの可能性~




経済・社会の枠組みをアジア規模でとらえる--。沖縄の自立型経済の確立において、また国の経済再生においてもその必要性が叫ばれ始めて久しい。国際物流ハブ機能のさらなる拡充や大規模な国際商談会の開催など、アジアへの国際物流の玄関口として存在感を徐々に高めつつある沖縄を舞台に、県内外の事業者はどのように海外展開に挑んでいるのか。その実態をレポートする。

◇◇◇

 那覇空港の国際貨物取扱量は2014年、約18万5000トンに達した。成田、関西国際、羽田に次ぐ全国4位で、国際物流ハブの開始前にあたる2008年と比べると約100倍という驚異的な伸びだ(下図参照)。そんな中、インフラや支援策を積極的に活用しながら海外への輸出高を伸ばしている県内企業の取り組みを、まずは追ってみよう。


※クリックして拡大

◇◇◇

「自分の目で見なければわからない」
視察と試食商談会で商機をつかむ
《株式会社 琉珉珉(りゅうみんみん)》

 県産豚肉や県産野菜を使用した餃子を、2013年から香港・マカオに輸出している株式会社琉珉珉。代表取締役の比嘉竜児さんが海外展開に着手したのは、2011年に参加した海外向けの県内商談会からだった。「海外事情に詳しい知人から『焼き餃子は香港で絶対に売れる』と言われ、半信半疑でしたがとにかく自分の目で見てこようと、補助事業を活用して香港へ視察に行きました。驚いたのは、沖縄から東京や大阪に行く感覚とそう変わらない距離に、こんなにすごい都会があったのか、ということ。そして、香港の量販店では水餃子や蒸し餃子が主流で、焼き餃子の種類が確かに少なく、『これはいける』と感じたことですね」。視察では香港人の海鮮好き・ワイン好きといった嗜好と、日本食がブランドとして絶大な信頼を得ている実感をつかんだ。「日本語で印刷されたパッケージに英語表記のシールを貼る方法でないと信用されない、といった実態にも驚かされましたね」
 現地での試験販売で手応えを感じた比嘉さんは、調理の簡単さ、味の良さが同時にわかるよう、バイヤーが餃子を「自分で焼いて試食する」形式で現地商談会を実施。量販店や外食企業などから招いたバイヤー約30名の反応は上々だった。「国内バイヤーとの商談では、輸送費やリードタイムの問題、他社との競合の厳しさなどを常に感じるのですが、香港での商談は実にシンプルでした。『この味で、この値段で、輸送費が合うなら取引しましょう』と、一気に話が進みました」
 2013年5月、香港のスーパー約100店舗に向け、定番商品の初回オーダー分として約15万個の冷凍餃子を航空貨物コンテナで出荷。比嘉さん自身も試食販売のため現地に赴き、何店舗も回って餃子を焼き続けた。覚えた広東語はガウジー(餃子)、シーメイ(味見)、ドーチェサイ(ありがとうございます)と、店舗スタッフ向けのザォサン(おはよう)の4語だけ。「あとはボディランゲージと笑顔で何とか乗り切りました(笑)」。
 その甲斐あって売上は着実に伸び、現在では海外向けの輸出が売上全体の約1割を占める。「今後は利益率の向上も意識し、飲食店向けの業務用出荷拡大に取り組みたい」と語る比嘉さんに、海外展開で失敗しないためのポイントを聞いてみた。「まずは現地へ行って、売り場を体験して、商品の反応も自分で確かめること。そうしないと商談の場で何も語れませんし、どの商品なら出せるかの判断もできません。できれば担当者と経営者が一緒に視察すると、社内の情報共有が深まって戦略も立てやすいと思います。香港には産業振興公社の現地事務所があり、私も相談や情報収集でよく立ち寄りますが、うまく活用するといいですよ。あと、細かい詰めの作業では現地事情に詳しい方の協力を得ることも大事。当社も動物検疫の書類や成分表の英語版を作成する際や、現地バイヤーとの商談には必ず協力してもらうようにしています」
 そんな比嘉さんの次のターゲットは、シンガポールだ。「シンガポールは肉の輸出の条件が厳しいので、海鮮餃子で挑戦します。2014年10月の『Oishii JAPAN』(ASEAN市場最大級の日本の食の見本市)に、北海道との連携で新たに開発した帆立の餃子を含む3品を出品しましたが、一般客への販売ができる最終日には300パックを2時間で完売。日本食のブランド力、信頼感の凄さを改めて感じました。為替が円安に振れ、輸出が強い今のうちに、支援策も活用しながらやれることをやっておきたい」と、新たな展開へも積極的だ。

ryumin_shisatsu.jpg
香港の量販店を視察した際に、焼き餃子を販売する店舗が少ないことを自らの目で確かめ実感した

ryumin_products.jpg
琉珉珉が販売している焼き餃子のラインナップ。個性的でバラエティ豊かな味わいが好評だ

ryumin_oishii_que.jpg
ryumin_package.jpg
シンガポールで開催された「Oishii JAPAN」では試食販売に多くの人が列を作った(上写真)。肉の輸出が難しいシンガポールはエビやもずくなど海鮮素材の餃子を売り込んだ(下写真)

ryumin_mrhiga.jpg
琉珉珉の比嘉竜児さん

株式会社 琉珉珉
那覇市古島2-3 #101
☎098-862-0178 
http://www.ryu-minmin.com


「郷土のお菓子を多くの国に届けたい」
各国毎に違う壁と果敢に向き合う
《農業生産法人 有限会社コウヤマ》

 沖縄で海外展開に取り組んでいるのは、県内企業ばかりではない。熊本県でサツマイモの生産から加工、販売までを一貫して行う農業生産法人有限会社コウヤマは、国際食品商談会「沖縄大交易会」(以下、大交易会)のプレ大会が開催された2013年から毎年、各国バイヤーとの商談のため沖縄を訪れている。シンガポールへ約5年、ハワイへ約3年の輸出実績を持つ同社営業部の海外事業担当、香山佳奈さんに、海外展開の経緯を伺った。
 「発端は2004年頃です。当時は農林水産省が海外輸出拡大を打ち出していて、少子高齢化による国内の人口減少や農業を取り巻く環境の変化などを鑑みれば、今後は東南アジアなど海外に目を向けるべき、と考えました。そこで地元の企業や農業法人と一緒に『熊本県農水産物等輸出協議会』を結成し、ジェトロなどと連携して輸出を開始したのです」
 しかし大きな壁が次々と立ちはだかる。代表商品「いきなり団子」をはじめとするサツマイモ加工品の大半が冷凍保存・流通を要するため高コストになること、海外に出す上では最低1年以上必要とも言われる賞味期限の長い常温商品がほとんどないこと、国によって輸出禁止となるものがそれぞれ違うことなどが重なり、商談先が極端に限られてしまったのだ。
 「それでも、将来を考えればいずれは海外に出ていくことになるのだから、と活路を探り続けています。シンガポールは日系の飲食チェーン店や小売店へ、ハワイは日系量販店への出荷をし、現地での実演販売も行い、2015年からはフランス・イギリス・香港・UAEへの出荷も開始しました。さらに海外商談会で知り合った企業と連携し、賞味期限1年以上の常温商品の開発も進めています」。商談会への参加が、新規取引先の開拓のみならず、商品開発の連携先との出会いにもつながり得るということだ。
 さまざまな障壁に直面しながらも、国内外の商談会に積極的に参加し、バイヤーや出展企業との接点を活用しながら粘り強く海外展開を続けている同社。現在は売上全体の1%弱に留まるという海外出荷を「3年後には10%にしたい」と語る香山さんが、大交易会に3年連続で出展を決めた理由とは何だろうか。「一番の魅力は、海外バイヤーが集まる商談会として国内有数の規模だということ。海外バイヤーとの個別マッチング商談は、自社商品が海外でどれだけ通用するのか、どこが問題でどうすれば取引が成立するのかという生の意見が聞ける上、自分の営業スキルの上達も図れる貴重な時間だと思っています。大交易会はバイヤーの選定もしっかりしているので、安心して商談に臨めるのがいいですね。これからもアジアへ、また世界へ向けて地元の魅力的な商品を発信し続けるためにも、この場を活用したいと思います」

kouyama_sekkyaku.jpg
ハワイの量販店で商品を積極的にピーアールしながら試食販売を行う香山さん

kouyama_ikinari.jpg
粘りの営業展開が実を結び海外進出の道を歩み始めた、主力商品「いきなり団子」

kouyama_mskouyama.jpg
有限会社コウヤマの香山佳奈さん

農業生産法人 有限会社コウヤマ
熊本県上益城郡益城町大字小谷 1316-1
☎096-286-4016
http://imo-ya.com


ハラル認証取得をアピールし
新たなマーケット開拓に挑む
《琉球黒糖株式会社》

 伝統製法を生かした創作黒糖菓子でおなじみの琉球黒糖株式会社。チョコレートと黒糖を合わせた「チョコっとう。」や「黒のショコラ」など、沖縄で古くから愛されてきた黒糖をトレンドに合わせてアレンジする新商品開発も積極的に行っており、2014年10月には黒糖菓子業界で初のハラル認証を取得。世界人口の約4分の1、19億人にものぼるとされるムスリム(イスラム教徒)の需要にも対応できるようになった。代表取締役の與座範裕さんは、初めて海外展開を意識した頃をこう振り返る。「同業者が先行して台湾へ進出し、当社もいずれ海外へ、と考えた7年前にタイミングよく県の補助事業の公募があり、香港で3ヶ月間の実地研修を行ったのが最初でした」
 同社の海外向け売上はここ数年、全体の3%程度を維持。香港向けの多良間産純黒糖が大半で、これにチョコ黒糖やミント黒糖などの加工黒糖が続く。「年3回は現地に行き、当社製品を扱う卸業者の販促活動を手伝うなど、コミュニケーションを大切にしています」と説明するのは商品開発部長の又吉優子さん。長期にわたる取引を実現している一方で、言語や資金回収、人材確保など海外展開特有の課題も抱えているという。「商談会でまとまりかけた案件が、英文メールへの対応に手間取るうちに流れてしまった苦い経験もあり、言葉の壁を越える難しさと大切さも痛感しています」
 同社にとって3回目となる大交易会への出展に向け、與座さんは「既に取引のある業者との関係を深めつつ、新たな業者との出会いや、ハラル認証取得商品を含む自社商品への反応をつかむ場として活用するつもりです。メーカーとして、自社商品を知ってもらう努力を精一杯やり、興味を持ってもらえたら協力先の商社と連携して具体的な取引に結びつける。その繰り返しで今後も、品質のよい日本製品であり沖縄県産品である当社商品を、アジアの多くの方々へと届けていきたいですね」と意気込みを語ってくれた。

ryukoku_halalcertificate.jpg ryukoku_halallist.jpg
黒糖菓子業界初のハラル認証取得証明書と、認証された20種類の製品一覧。申請から認証取得まで約8カ月を要したという。この取得を機に新たな市場開拓にも積極的に挑んでいく

ryukoku_products.jpg
若い女性をターゲットにお洒落にアレンジされた黒糖菓子商品。海外向けは純黒糖の売上が堅調だ

ryukoku_person.jpg
琉球黒糖の與座範裕さん、又吉優子さん

琉球黒糖 株式会社
糸満市西崎町4丁目16-19
☎098-992-8300
http://www.ryukyu-kokuto.jp

◇◇◇

 中小企業からは敬遠されがちな海外展開に、果敢に挑む3社の事例から見えてくるもの。それは「信頼できる他者との協働・連携」の重要性だ。これが実現できれば、アジアへの国際物流の玄関口としての機能を拡充し続ける沖縄を舞台に、決して無理でも無謀でもない海外展開が現実となり得る。40億人といわれるアジアマーケットに“メイドインジャパン”ブランドの引力に惹きつけられる潜在顧客層が無数に存在しているのは明らかだ。何もせず後手を踏むのではなく、まずは11月の大交易会の動向にぜひ注目してほしい。“メイドインジャパン”を沖縄からアジアへ送り出そうとする事業者たちの“熱気”から、その可能性の大きさを実感できることだろう。

---サイドノートコラム---
第2回「沖縄大交易会」開催!

 沖縄大交易会は、沖縄の国際物流ハブ化を促進することにより、日本全国の特産品等の海外販路拡大に資することを目的に開催される国際食品商談会だ。日本全国の農林水産業者・食品加工業者(サプライヤー)と国内外の流通事業者(バイヤー)が、東アジアの中心という地理的優位性を有する沖縄に集結。海外バイヤーが多数参加し、質の高い商談が可能な日本最大級の「事前アポイント型個別商談会」として寄せられる期待は年々高まっており、今年度からは産業振興公社内に沖縄大交易会実行委員会事務局を設置。継続的な開催および実施体制の強化を図っている。

日程: 2015年11月26日(木)、27日(金)
会場 : 沖縄コンベンションセンター(宜野湾市)
問い合わせ:
第2回沖縄大交易会 マッチングデスク
(株式会社JTB西日本法人営業大阪支店内)
担当: 松田、成瀬
☎ 06-6366-6135(土・日・祝日を除く平日9:30~17:30)
okinawa-daikouekikai@beeproco.jp

OGTF_view.jpg
過去開催回の会場風景

---“ちょこっと”ビジネスWORD解説---
● ジェトロ
独立行政法人日本貿易振興機構(英語:Japan External Trade Organization、略称:JETRO、ジェトロ)は経済産業省所管の独立行政法人。2003年設立。日本の貿易の振興に関する事業、開発途上国・地域に関する研究を幅広く実施している。

● ハラル
ハラル(HALAL)とは、イスラムの教えで許された、「健全な商品や活動」の全般を意味する。ハラルの反対は「ノン・ハラル」あるいは「ハラム」と呼ばれ、これらはイスラム教徒にとっては有害なもの、中毒性のあるものを意味している。ハラルとは、こうした安全な生活を示すためのガイドラインであり、イスラム教徒にとっては無くてはならない基準となっている。