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加速するOKINAWAインバウンドビジネス ~その4・買い物編~

2015.03.20 Fri.


加速するOKINAWAインバウンドビジネス
~その4・買い物編~




沖縄県文化観光スポーツ部の発表によると、2014年の訪沖外国人観光客(インバウンド)数は89万3500人で前年比62.2%(34万2700人)増。まさに“インバウンド元年”とも呼ぶべき1年だった。空路編・海路編・滞在編と続いた本紙特集「インバウンドビジネス」シリーズの最終回は「買い物編」。インバウンド客向けの物販で実績を伸ばす県内企業の取り組みから、外国人客の満足度を高めて集客・売上をアップするためのポイントを学ぶ。

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 沖縄県の平成25年度外国人観光客実態調査報告書を見ていくと、沖縄を訪れるインバウンド客がどこで、何を買っているかが見えてくる(下図参照)。さらに興味深いのは「旅行先として沖縄が劣っていると感じるもの」の設問に対する回答で、第2位に「買い物」が挙がったこと。つまりインバウンド向け物販にはまだまだ伸びしろがある、ということだ。これをふまえ、今回は卸・小売・製造とそれぞれ違う立ち位置から、インバウンド向け物販に奮闘する3社の取り組みをレポートする。

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アジア市場進出の足がかりとして
沖縄の優れた商品を提供し続ける
《株式会社健食沖縄》

 沖縄の健康食品や化粧品などを中心に、“沖縄の良いもの”にこだわって卸・小売業を展開する株式会社健食沖縄。同社は2014年11月、那覇空港新国際線旅客ターミナルビル(以下「新国際線ビル」)の搭乗ゲート前に直営店「KENSHOKU OKINAWA」をオープンした。出発客で連日賑わい、同店の売上は好調に推移しているという。
 同社の代表取締役、平良範子さんは、「アジア市場への足がかりを求めて2年ほど前から海外商談会などに参加していました。新国際線ビルへの出店の話が浮上した時は、『海外展開するなら、外国人相手の小売業は必ず良い経験になる』と確信し、沖縄からアジアに向けて発信したいと思い決断しました」と出店の経緯を説明する。
 沖縄らしく南国的な明るさの店内には約300種類もの商品が並ぶが、そのラインナップ選びには苦心したという。「新国際線ビル内の他社店舗と商品がかぶらないよう配慮しながら、私たちが得意とする健康食品や化粧品を主力にした商品構成で勝負することにしました。これらは素材や効能などの説明が不可欠なので、中国語や英語を話せるスタッフを採用しました。また乾燥もずくや黒糖などの県産品には、多言語の楽しいPOPやリーフレットをつけるなど、随所に工夫を凝らしています。土産菓子なども置いていますが、一番良く売れているのは健康食品と化粧品ですよ」
 平良さんは沖縄の商品をアジアに紹介する立場から、商品の魅力を確実に伝えられるパッケージ表現や、多言語による商品紹介ツールの必要性を訴える。「マーケティングの専門家からアドバイスを仰ぐのも一案かと思います。私たちも手探りですが、空港店では健康志向の高いインバウンド客に情報を発信し、現地市場での商流を作る役目を果たしたい。そして沖縄の商品を気に入ってくれたアジアのお客様が自国でも購入できるよう、中国や台湾に取次店を確保したいと考えています。商品を卸してくれる各メーカーさんと共に発展していきたいですね」と展望を語った。

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「KENSHOKU OKINAWA」の店舗全景(上写真)。ウコンやシークヮーサー、もろみ酢など沖縄でも人気の高い商品が良く売れるという。多言語POPに目を留め、大量買いしていく人も
(下写真)

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「商品には手に取ってもらえる魅力が、販売員にはその魅力を伝える接客技術が重要」と平良さん。ここに語学力が備われば外国人客にも良さが伝わり、確実に売れていくという

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レジ近くに陳列した100円商品は、会計の際の“ついで買い”を促すのに有効。日本円の小銭を使い切るために購入する人も多い

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健食沖縄の平良範子さん

株式会社 健食沖縄
那覇市壺川2-2-9
☎098-853-6689
http://www.ganju.jp/


来店客の利便性を向上させて
地元客とインバウンド客に対応
《イオン琉球株式会社》

 2014年12月、国内外からのクルーズ船が数多く寄港する那覇港の若狭バース近くに「マックスバリュ若狭店」をオープンしたイオン琉球株式会社。管理本部広報担当の喜納優子さんは出店経緯について、「当初は小売店が少ない若狭地域で、地元のお客様の買い物便宜を満たすお店を目指して計画されました。その過程で若狭バースのターミナルビル運用開始が明らかになり、店舗設計の段階でインバウンド客の利便性にも配慮することになりました」と説明する。
 イートインコーナーの近くに県産土産品コーナーを置き、無料WiFiも導入。売り場のカテゴリ案内表示は4カ国語の多言語表記とするなど、県内マックスバリュの中ではインバウンド対策が最も先行しているという。「現在イオン全5店舗で対応しているタックスフリー(注1)については未導入ですが、動向を見ながら前向きに検討する予定です」と喜納さん。
 同社のインバウンド客による売上額は、アメリカンビレッジに近接したイオン北谷店が圧倒的に高く、2位はモノレール小禄駅に直結したイオン那覇店だという。営業企画部インバウンド担当課長の呂姝(ろしゅ)さんは、「銀聯(ぎんれん)カード(注2)の利用額も伸びています。北谷店の銀聯カード決済額は全国のイオンで2位、那覇店は4位。タックスフリー対応開始月は北谷・那覇の両店とも利用額が前月より2割アップしました」と語る。両店では英語や中国語が話せるスタッフが5〜6名常勤。さらに北谷店ではサービスカウンターに通訳アプリを設置したり、スタッフ向けの多言語応酬話法のセミナーを開催するなど、ハード・ソフトの両面から多言語対応に取り組んでいる。
 売り場ではインバウンド客に人気の商品をフルライン揃え、多言語のPOPも効率的に設置しているが、喜納さんは「基本的な姿勢はあくまでも『地域のお客様と同じ品質・価格の商品をインバウンド客にも提供する』こと。このスタンスは今後も貫いていきます」と語ってくれた。4月には全国のイオンで初めての“リゾートモール”内にライカム店のオープンを控えるが、「モールの核店舗として求心力を発揮し、県内・県外・そして海外に沖縄の魅力ある商品を発信していきます。県内メーカーさんとのコラボ商品の開発にも取り組みたい」と連携にも前向きだ。

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商品カテゴリーの表示は4カ国語で表記され、インバウンド客も目当ての商品を探しやすい。食品以外では薬品・化粧品などもよく売れるそう。店内では無料Wi-Fiも使えて便利

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インバウンド客向けのクーポン付きリーフレット。タックスフリーと併用で最大13%オフに。観光マップには同社の全店舗の位置も示し、巧みに誘客。掲載した化粧品や医薬品、菓子、電化製品などをそのまま指名買いする人も多いとのこと

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イオン琉球の喜納優子さん、呂姝(ろ・しゅ)さん

イオン琉球株式会社
南風原町字兼城514-1
☎098-889-5464
http://www.aeon-ryukyu.jp/


先行してインバウンド対策を実施
商品開発や店舗展開も積極的に
《株式会社御菓子御殿》

 読谷村の特産品・紅イモを使った「元祖紅いもタルト」で知られる株式会社御菓子御殿。同社代表取締役社長の澤岻英樹さんは、「インバウンド対応の必要性を感じたのは今から5〜6年前。出張先の東京や京都、福岡の取り組みを目の当たりにしたのがきっかけです。ちょうどその頃から当社に海外メディアからの取材オファーが増え出し、アジアでの認知度がじわじわと高まったようです」と振り返る。
 国際通りの県庁前交差点近くに構える松尾店の店長であり、同社販売本部部長を兼務する知念吉幸さんは、「インバウンド客が急増したのは、台湾からのクルーズ船の定期就航が開始した4年程前から」と説明する。入港日には必ず若狭バースへ行き、ツアー添乗員に声をかけるなどして地道にPR。松尾店はバスで移動するツアー客が訪れやすい立地にある上、菓子製造見学や150席規模のレストランもあるということで添乗員に気に入られ、「現在はツアー客に加え、国際通りを訪れたフリーの個人客まで当店に誘客してくれることもあるほどです」とのこと。
 銀聯カードの取り扱いは2010年から開始。店内無料WiFiも同時期に導入するなど、常にインバウンド対応を先行してきた。「2015年1月にタックスフリー対応を開始したとたん、客単価が一気に上がりました。『あといくら購入すると免税扱いになりますよ』という声かけがよく効きます」と知念さん。銀聯カードの利用額も対前年で約3倍増だという。
 多言語対応可能なスタッフが常時店内にいるようシフトを調整し、外国語が話せないスタッフの手助けにと、自社オリジナルの指さし対話シートを作成。さらに本社では希望者を対象とした中国語・英語・韓国語の講座を随時開催するなど、多言語対応にも余念がない。
 主力商品の「元祖紅いもタルト」以外では自社製の純黒糖や餅菓子もインバウンド客に人気が高く、現在は抹茶やわさび味の商品も開発中だという。「沖縄という枠を超えた商品展開で、インバウンド客に『一番近い日本ということで沖縄に来たけど、沖縄も良いね』と感じてほしい。今後は恩納村や読谷村、名護市など地域毎の店舗の特色を際立たせ、個性を出していきたいですね」と澤岻さん。インバウンド対応をきっかけに、新しい進化を遂げつつある同社の今後が楽しみだ。

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インバウンド客の入店・購買促進のため、店舗入口では銀聯カード・タックスフリー対応店であることをアピール。インバウンド客に好評の「くるみ餅」にも多言語POPで特徴を説明

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店内に置かれたパンフレットは中国語(簡体字・繁体字)・韓国語・英語・日本語の5タイプを作成。商品カタログにもなっており、価格もわかりやすく表記。またスタッフ用に作成した指さしシートは自社商品の特徴を指さしながら説明できる

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御菓子御殿の澤岻英樹さん、知念吉幸さん

株式会社御菓子御殿
読谷村字宇座657-1
☎098-958-7333
http://www.okashigoten.co.jp/

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 沖縄への海外航空路線は2015年も新規就航や増便などさらなる拡充の動きがある。クルーズ船の寄港予定回数も186回と、過去最多となる見通しで、しかもクルーズ船の外国人乗客に簡易な手続きで入国を認める船舶観光上陸許可制度が2015年1月より施行。那覇港に最も多く寄港する台湾からの定期就航クルーズ船は同制度の適用対象で、沖縄での滞在時間が約2時間延びる。ショッピングやサービス系事業での経済効果は期待大だ。
 2015年はインバウンドビジネスがさらに大きく花開く可能性に満ちた年。既存顧客へのサービス水準を維持しながら、インバウンド客のニーズや購買動向を意識した販売戦略・人材育成にも先んじて取り組むという、インバウンド市場のリーディングカンパニーの動きから学ぶべきものは多い。早めの決断と行動が、チャンスを実らせるカギになるだろう。

※注1
タックスフリー…非居住者向けの消費税免税制度。本紙5ページ「今さら聞けないビジネス用語」に詳しい用語解説あり。

※注2
銀聯(ぎんれん)カード…中国のカードブランド。デビットカード・クレジットカード合計の発行枚数は全世界で40億枚以上といわれている。

 

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