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加速するOKINAWAインバウンドビジネス ~その3・滞在編~

2014.12.25 Thu.


加速するOKINAWAインバウンドビジネス
~その3・滞在編~




2014年は、海外プロモーションや海外航空路線の拡充など、官民挙げて取り組んだ沖縄のインバウンド(訪日外国人観光客)誘客が大きな成果を上げた一年だった。県観光政策課の発表によると、同年4〜10月のインバウンド客数の累計は63万1300人。前年度1年間の累計を既に上回っている。今回は、インバウンド対応の最前線に立つ宿泊施設の取り組みをレポートし、業界を越えて参考にしたいインバウンドの受け入れ体制づくりのヒントを探る。


インバウンド取り込みは最大の使命
リピーター獲得のため意欲的に行動
《メルキュールホテル沖縄那覇》

 那覇・壺川駅前のメルキュールホテル沖縄那覇は、フランスのホテルチェーンであるアコーホテルズの国内8軒目のホテルとして2012年4月に開業。現在では宿泊客の約半数をインバウンドが占め、その9割近くが台湾・香港・中国本土からの旅行者だという。総支配人の猿丸新二さんは、「当ホテルはオープン当初からインバウンドを最重要市場の一つとして意識しています。中国語圏からの利用者が多いのは、アコーホテルズとして中国本土だけで132軒のホテルを展開しており、アジアパシフィックでのブランド認知度が高いのが理由の一つだと思います」と説明する。
 同ホテルではインバウンド市場への積極的なプロモーションを重要戦略の一つと位置づける。「航空会社や現地旅行会社とタイアップした誘客に加え、2014年は一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー(以下OCVB)の海外セールスコール支援を活用してタイ・シンガポール・上海・ロシアなど計7地域での新規市場開拓を行いました。海外向けBtoB観光媒体への広告出稿や、旅行誌・女性誌などの旅行特集記事など、メディアへの積極的な露出も心掛けています」と猿丸さん。
 こうしたプロモーション活動の際に、必ず現地ニーズ調査を実施して、その内容を業務やサービスに反映させている点にも注目したい。「例えば、中国語圏では冷たい飲み物を出されると『冷遇されている』と感じる方が多いそうです。当ホテルでは飲み物の選択肢の中に温かいものを必ず用意するようにしています。また朝食も各地の食習慣や嗜好を考慮し、野菜サラダや麺類などの“好まれる”料理を基本に、“せっかくだから食べてみたい”沖縄料理や和食のメニューもバランスよく揃えるようにしたところ、お客様からお褒めの言葉をより多くいただくようになりました」
 そして、一度利用してくれた宿泊客にリピーターになってもらうため、接遇面のスキル向上も重要戦略に掲げている。独自の接遇トレーニングの他、外国語で沖縄の魅力を伝える「沖縄特例通訳案内士」の資格取得も奨励。さらにOCVBの講師派遣支援事業を利用してサービススキル強化のための講習会も実施している。
 「スタッフのコミュニケーションレベルを上げてお客様の満足度を向上させることは、リピーター獲得への早道になります。ただ、沖縄に限らず全国的な業界共通の課題ですが、長引く不況でホテルの利用頻度が下がったのが原因なのか、若い人の間でホテル業のステータスが低下し、優れた人材の確保が難しくなっています。良質なサービスを受ける喜びと、それを提供する喜びを、若い人にもっと知らせていかなければと感じています」
 観光振興による経済の活性化は今や国を挙げた施策であり、ホテル業界はその重要な役割を担う存在。インバウンドの増加で大きなチャンスが訪れている今、業界全体のサービス水準の向上、また戦略的なステータスアップは急務といえる。「メルキュールブランドのコンセプトは『ローカル(地域性)との融合』。沖縄らしさを大切にしながら、グローバルチェーンの優位性も活かして今後は東南アジアやヨーロッパ、またブライダル市場も取り込んでいきたい。沖縄の観光振興のため、当ホテルの立場からやれることに最大限の努力をしていくつもりです」と猿丸さんは展望を語ってくれた。

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メルキュールホテル沖縄那覇の魅力の一つに、那覇空港からタクシーやモノレールで約10分、駅から徒歩1分というアクセスの良さがある。さらに、施設内にはレンタカー営業所が設けられているので観光地への移動も効率的だ

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Wi-Fiの完備はもちろん、24時間対応できる6通貨の両替機を那覇市内のホテルで初めて導入した

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施設内の案内掲示物は、日本語・英語・中国語で表記している

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中国語で対応する日本人スタッフ。他にも、フランス人やルーマニア人、中国人など5カ国のグローバルスタッフが勤務。各地から那覇への直行便の席数比率やチャーター便の就航状況をふまえ、ハード・ソフト両面でニーズに即した対応を行う同ホテルの戦略は、はっきりと“外”に向けられている

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メルキュールホテル沖縄那覇の猿丸新二さん

メルキュールホテル沖縄那覇
那覇市壺川3-3-19
☎098-855-7111
http://bit.ly/1G6Ndho


春季宿泊客の実に9割が欧米人
離島の小さな宿にインバウンドの波が
《ハナムロイン阿嘉島》

 那覇・泊港から高速船で50分ほどの阿嘉島(座間味村)に、静かな異変が起きている。5年ほど前から、島を訪れるインバウンド客、とりわけ欧米からの旅行者が急増しているのだ。「『ロンリープラネット』や『ミシュラン』などの海外メディアで座間味村が紹介されたのがきっかけです。私が経営する宿も春シーズンはヨーロッパからの旅行者が宿泊客の95%を占めます」と話すのは、美しい海と空を満喫できる宿泊施設「ハナムロイン阿嘉島」を経営する大矢正史さんだ。
 当時は英語がほとんど話せなかったという大矢さんだが、「客室6室の小さな宿なので、受け入れ体制づくりは私個人の能力次第。これを機に本格的に英語を勉強し、インバウンド客を積極的に取り込もうと決意しました」。毎朝5時半起床で朝1時間の英語学習を続けたところ、2年を過ぎる頃にはインバウンド客とのコミュニケーションがスムーズになったという。
 これと並行して英語版ホームページを自作し、2013年からは閑散期にワールドワイドな宿泊予約サイトでの集客を開始。「2012年と比較してインバウンド客数は3倍以上に伸び、閑散期の売上が飛躍的にアップしました。この結果から広報の必要性を改めて学びましたね」と大矢さん。
 閑散期の3〜4月と9〜11月にインバウンド客が集中する理由を、大矢さんはこう説明する。「この時期のヨーロッパは寒く、長期休暇を取る人が多い。休暇を利用し、桜や紅葉を目当てに日本旅行を計画した人が、旅の最後に島を訪れるという流れが大半です」。夏場のピーク期でも高速船とフェリーを合わせて1日1000人が送客限度となる阿嘉島で、閑散期に集中してインバウンド客を誘客できれば、いわゆる〝夏だけ繁盛〞から脱却して効率的な経済効果が期待できる。
 インバウンド客をこの時期に呼び続けるにはどうするか。その方法論を学ぶため大矢さんは現在、産業振興公社の万国津梁産業人材育成事業を活用してオーストラリアの旅行会社で2カ月間のOJT研修を受けている。帰国後は、研修の成果を次シーズンの運営に反映させる予定だ。研修にあたって大矢さんは、フランス人の宿泊客から言われたひとことを心に刻んでいるという。
 「『阿嘉島の魅力はツーリスティックでない(観光地化されていない)ところ。“レス・イズ・モア(少ないほど豊か)”だから、やり過ぎるな』と。彼らは便利さや娯楽よりも、海や星空、人の温かさを求めて島に来てくれる。OJTではそんな阿嘉島らしさをもっと広く、深く伝える方法論を学んできます。既存のマリンサービスや星空ガイドを拡充させ、ゆくゆくは阿嘉島の豊かな自然を学ぶ学校を建てたい」と意欲を語ってくれた。

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ハナムロイン阿嘉島のモットーは、「オープンエア(開放感)、美味、清潔」。繁忙期のスタッフ採用にあたっては、英語が流暢であることよりも、外国人とのコミュニケーションを積極的に楽しもうとする姿勢を重視しているという

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晴れた日の夜間ともなれば満天の星が夜空を彩る阿嘉島。気象予報士の資格を持つ大矢さんによる星座の説明を交えながら、美しい夜空を鑑賞できるのも同宿の魅力の一つ

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テラスには多種多様な国籍の人が集まり、思い思いに交流を楽しむ。「ヨーロッパのリゾート地では味わえない静かさ」に惹かれ、パリやローマなどからも繰り返し訪れる客が後を絶たない

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大矢さんの宿の食事は、「日本がとにかく大好き」な外国人と「自分のスタイルを変えたくない」外国人それぞれの嗜好を考慮したもの。朝食はパン食に絞り、夕食では洋食を基本に沖縄料理や和食メニューなども交え、ローカル食を味わいたい人も楽しめる料理を提供している

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ハナムロイン阿嘉島の大矢正史さん

ハナムロイン阿嘉島
(ハナムロ・インターナショナル)
座間味村阿嘉52 ☎098-987-2301
http://www.hanamuro.com


沖縄におけるインバウンド関連支援施策の今
~満足度向上や人材育成支援で幅広いサポートを実施~
===一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー

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※いずれもクリックで拡大
出典:
●平成25年度外国人観光客向け多言語情報発信コールセンター運営事業報告書

 世界水準の観光リゾート地を目指す沖縄県では、インバウンド客の受け入れに取り組む県内事業者への支援が重点的に行われている。中でもOCVBが行う各種支援事業は、「インバウンド客の満足度向上」という至上目標に向けて多様かつ充実したメニューが用意され、事業者による活用も年々進んでいる。
 インバウンド客向けのサポートとして代表的なのが、電話やメールなどを使って通訳や緊急時の対応、観光情報の提供などを無料で行う多言語コールセンターだ。英語・韓国語・中国語(繁体字・簡体字)に対応した同センターの運営を受託するOCVB企画総務部企画広報課の米谷保彦課長は、センターの役割について「インバウンド客が〝安心・安全〟な沖縄旅行を楽しめるようサポートすることが最大の使命」と話す。現在は情報提供・通訳対応・トラブル対応の順に問い合わせが多く、情報提供ではバスの乗り継ぎに関する問い合わせが最も多いとのこと。「センターでの対応内容が詳細にまとめられた分析報告書はインターネットで公開されています(※注1)。インバウンド客の要望や苦情、相談などのデータやコメントから、ビジネスのヒントになるニーズが見えてきます。事業者の方がマーケティングや事業戦略を考える上で役立つ資料だと思います」と米谷さんは活用を勧めている。
 県内事業者向けのサポートとしては、質の高いサービスを提供できる人材の育成を後押しする「世界に通用する観光人材育成事業」が代表的だ。この事業は講師派遣・語学研修リーダー設置支援・観光人材育成セミナー開催の3本柱で構成されている。「講師派遣では、語学や接遇、ビジネススキルなどの研修やセミナーを自社で実施したい事業者に対し、講師の派遣を行っています」と説明するのは、OCVB国内事業部受入推進課の大城清剛課長。同事業を活用して今年度行われた講師派遣は既に85件、受講者は387名に上るという。詳しくは沖縄観光人材育成マッチングサイト『育人(はぐんちゅ)』(※注2)で確認可能だ。
 「同事業は2015年2月まで継続して行います。また、外国人または語学堪能な人材の雇用にあたり、最大9カ月間の費用を助成する『語学研修リーダー設置支援』については助成期間が残り少ないので、申し込みはお早めに」と大城課長。
 この他、翻訳支援やWi-Fi設置支援、海外セールス活動にかかる費用の一部を支援する「海外セールスコール支援」も活用頻度の高い支援メニューだ。それぞれ対象業種が異なるので詳しくはウェブサイトで確認してほしい。

※注1
沖縄インバウンドnet
http://www.visitokinawa.jp/oin/

※注2
沖縄観光人材育成マッチングサイト
育人(はぐんちゅ)
http://jinzai.ocvb.or.jp/hagunchu/

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株式会社星野リゾートが実施した「VIP対応等のおもてなし英会話研修及び接客スキル向上研修」の様子。沖縄の旅を満喫してもらえるようなワンランク上の英語接客を学ぶクラス

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米谷保彦課長

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大城清剛課長

 

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