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加速するOKINAWAインバウンドビジネス ~その2・海路編~

2014.10.10 Fri.


加速するOKINAWAインバウンドビジネス
~その2・海路編~



県文化観光スポーツ部の発表によると、平成25年度の観光収入は4478億6800万円と過去最高を記録。観光収入の増加に寄与しているのが、インバウンド(訪日外国人旅行)だ。平成26年4月には那
覇クルーズターミナルの供用も開始。数千人単位で沖縄を訪れるクルーズ乗客・乗組員をターゲットにした、新たなビジネスの芽はどこにあるか。その可能性についてレポートする。


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出典:
●2004~2013年:沖縄県総合事務局「2014年の沖縄におけるクルーズ客船寄港回数」
●2014年予定:那覇港管理組合ホームページ「2014年那覇港クルーズ船入港予定」、
石垣市建設部 港湾課「2014年石垣港クルーズ船入港予定」


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出典:
●寄港実績:那覇港管理組合ホームページ
●船の詳細:各船会社ホームページ


出典:
●沖縄県文化観光スポーツ部「平成25年度外国人観光客実態調査概要報告」


クルーズ船の受入環境を整備
寄港地として選ばれる港を目指す

 平成26年4月、那覇港の若狭バース(乗客の乗降を行う岸壁)に那覇クルーズターミナルが完成し、観光立県にふさわしい海の玄関口が誕生した。
 ターミナルビルの延床面積は約4500㎡。1階はエントランスホールとバス・タクシーの待機場、2階にはCIQ(税関・出入国管理・検疫)ホールと沖縄伝統工芸品の展示スペースが設けられている。CIQホールの出入国審査ブースは可動式で、入港のない日は収納して多目的ホールとして活用できる。クルーズ船とターミナルビル2階を繋ぐボーディングブリッジも来年早々に供用予定で、乗客の利便性がさらに向上する見通しだ。
 8月には若狭バースから臨港道路若狭2号線が開通し、ターミナルビルから国際通りへの所要時間が20分短縮。那覇市内観光周遊バス「ゆいゆい号」の停留所も、徒歩5分圏内に新設された。下船後の交通網が整備されたことで、乗客は限られた時間を有効に使い、買い物や食事、観光を楽しめるようになった。
 アジアを中心としたクルーズ市場が急成長を遂げる中、船の大型化が急速に進み、各地で受け入れ港のインフラの見直しが進められている。「来年は16万トン級のクルーズ船がアジアに配船される予定があり、那覇港へ寄港する可能性が出てきました」と語るのは、那覇港管理組合の企画建設部企画室主幹、金城盛康さん。しかし若狭バースは、設計当時主流だった7万トン級を対象にしており、接岸できるのは13万トン級まで。これを超える大型船の接岸や2隻同時の入港の際には、対岸にある貨物船用の岸壁を使うしかない。この状況を踏まえ、同組合では2隻同時入港にも対応可能な第2バースの増設など、環境整備に向けた検討を開始したという。
 「環境整備を進める一方で、飛行機と船を組み合わせた那覇港発着の旅行『フライ・アンド・クルーズ』の誘致も増やしていきたいと考えています。那覇港を利用する旅客の利便性向上のため、起点港機能強化を目的とした補正予算を計上し、議会での承認を得ました。今後は起点港に必要なX線装置などの機材も揃えていきます」と金城さん。起点港になれば乗客が県内で前後泊するようになり、消費額の増加が見込める。また船内で消費される食料品や備品、ベッドメーキングなどのサービスも県内で調達されることになるため、経済波及効果はさらに拡大する。
 寄港地や起点港に選ばれるには、地元の歓迎ムードの演出も欠かせない。このため那覇市と同組合、市観光協会、県、沖縄観光コンベンションビューロー(以下OCVB)などの機関や企業で「那覇クルーズ促進連絡協議会」を組織し、地元住民と乗組員の交流を目的としたディナーショーや船内見学会などを開催。那覇港を含む湾岸一帯への関心をよりいっそう喚起するべく取り組んでいるという。
 一度に数千人の〝潜在顧客〞が通過するターミナル周辺はまた、外国人客のニーズ調査や商品プロモーションの場にもなり得る。金城さんは「県内事業者の業容拡大の一助になれば」と受け入れに前向きだ。海外向けの商品開発や販路拡大を考えている企業は、活用の可能性についてぜひ検討してみてほしい。

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平成26年7月、若狭バースに着岸したアジア最大級のクルーズ船、ロイヤルカリビアン社のボイジャー・オブ・ザ・シーズ号(撮影:株式会社フロームワン)

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スタークルーズ社のスーパースター・アクエリアス号に乗って台湾からやってきた客の約半数は、観光バスに次々と乗り込み、県内各地へと向かっていく

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接岸するクルーズ船に向けて掲示された、ターミナルビルの横断幕。各国の言葉で「ようこそ沖縄へ」と歓迎のメッセージが贈られる

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臨港道路若狭2号線の開通式では、地元の子どもエイサー隊による演舞が華を添えた

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那覇港管理組合の金城盛康さん

乗客の過半数近くはフリー観光
ビジネスチャンスは広範囲に

 クルーズ船の寄港は、午前中に入港して夕方に出港するケースが多い。例えば香港のスタークルーズ社が運航するスーパースター・アクエリアス号は10時入港、18時出港が基本だ。乗員数の内訳は、乗客約1500人、乗組員約700人。乗客のうち半数近くが貸切バスで観光地を巡るツアーに参加し、残りは公共交通機関などを使って自由に行動するという。
 自由行動派の乗客をサポートするのが、那覇市観光協会のスタッフだ。ターミナルビル1階の観光案内所に多言語対応スタッフを待機させ、個別の質問や相談への対応、各種観光情報の提供などを行っている。
 「現在は英語3人・中国語3人・韓国語2人のチームで対応しています」と説明するのは、同協会の国里顕史さん。クルーズ客の傾向について聞くと、「最盛期にはほぼ毎週入港する台湾からの船について言えば、沖縄へのクルーズは飛行機やホテル代がかからず、出費が抑えられるため人気が高いようです。電化製品や薬などの買い物、ラーメン・焼き肉・寿司などの日本食が人気で、沖縄を訪れるというより『一番近い日本に行く』という感覚の人が多いように感じます」とのこと。「欧米からのクルーズ船も年に数回寄港します。彼らは買い物や食事よりも、首里城など沖縄の歴史や文化に関する観光スポット巡りを好む傾向が強いです」
 那覇港から遠い事業者にとって、滞在時間の短いクルーズ客は「自社とは関係ない」と感じるかもしれない。しかし、港にひと晩停泊する〝オーバーナイト〞の船もあり、平成26年は4〜9月に那覇港で9回寄港があった。さらに、乗員数の4〜6割を占める乗組員の潜在需要も見逃せない。「乗組員は旅慣れたリピーターです。船から自転車を持ち出すなど自由に移動し、一歩進んだ沖縄滞在を楽しんでいます。彼らのために限定商品を企画したり、店頭でチラシを配って次回寄港時の来店を促すといったことを県内事業者にお勧めしたいですね」と国里さん。クルーズによるビジネスチャンスは地域・業種いずれも広範囲に亘ると見て間違いない。自社で何ができるか、積極的に模索していきたいところだ。

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(一社)那覇市観光協会の国里顕史さん


PickUp Company
エリア全体の求心力でインバウンド誘客
===デポアイランド(株式会社 奥原商事)

 美浜タウンリゾート・アメリカンビレッジは、米軍基地跡地の海岸埋立地を活用した巨大なショッピング&アミューズメントタウン。クルーズ旅行のオプショナルツアーが組まれていることもあり、3年ほど前からインバウンド客が急増しているという。2010年に完成した商業施設「デポアイランド」の店舗など、およそ60店舗のテナント管理を行う株式会社奥原商事の専務取締役、奥原悟さんに話を聞いた。
 「街と自然を融合させ、県民に受け入れられる街づくり、店づくりを目指した結果、アメリカンビレッジは県民のみならず国内外からの観光客にも足を運んでいただけるエリアになったのだと考えています」
 現在は来場者の4割が観光客で、そのうち約15%が海外からのインバウンド客。6年ほど前に始めた繁体字フリーペーパーへの広告出稿は今も継続しており、自社ホームページの多言語化も3年前に完成。アメリカンビレッジのホームページも間もなく多言語化されるという。「各店で掲示するPOPの多言語化は必須ですね。接客スタッフにも、旅の思い出になるような応対を心掛けてほしいと、折に触れて声をかけています」と奥原さん。
 インバウンド客の誘致には、エリア全体で歓迎ムードを醸し出すことが重要と考え、様々なイベントも計画中だという。奥原さんは「アメリカ文化と沖縄のチャンプルー文化が組み合わさった、アメリカンビレッジらしい催しを海外からのお客様にも楽しんでいただきたいですね。10月はハロウィン、11・12月はイルミネーションを主軸に、来場者参加型のイベントを企画できればと思います」と、エリア全体の誘客向上に向けて求心力を高めていく構えだ。

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3カ国語+うちなーぐちで表記されたアメリカンビレッジのウェルカム看板。ビーチやホテル、ショップ、レストラン、アミューズメント施設、映画館などが建ち並び、昼夜問わず地元客や観光客で賑わっている

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(株)奥原商事の奥原悟さん


株式会社奥原商事
北谷町美浜9-2
☎098-926-0808
http://www.depot-island.co.jp/


PickUp Company
海外のグルメサイトでも高評価を獲得
特製ソースのお土産需要も上昇中
===ステーキハウス88(株式会社 沖縄テクノクリエイト)

 アメリカンタイプのステーキをはじめとする豊富なメニューと、レトロな店内が魅力の老舗レストラン、ステーキハウス88。系列店6店舗には連日、多くの観光客が訪れる。「インバウンド客は当店の売上の約2割を占めます。海外のグルメサイトの評価を見て来店される方もいます」と話すのは国際通り店のホールマネージャー、中島徳家さんだ。
 米軍統治時代の「Aサインバー」をルーツとしているだけあって、同社の英語を使った接客の歴史は長い。さらに10年ほど前から中国語対応のできるスタッフを常時雇用しているそうだ。平成25年11月にはOCVBが主催する中国本土のクルーズ船商談会にも参加。クルーズ客受入の足がかりとするため、ニーズや課題の把握に取り組んだという。
 「来店客の要望に応え、3年前に特製オリジナルソースを商品化したのですが、これをお土産として購入される海外客の方が増え始めています。ドレッシングもよく売れますね」と中島さん。ユーザーの声を反映した商品開発が、インバウンド対応を機に販路拡大へと繋がった、ひとつの好事例と言えそうだ。

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英語と中国語で表記された店舗前のショーケース。フリーで行動しているインバウンド客の誘客に効果を発揮している

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ステーキハウス88国際通り店の中島徳家さん


ステーキハウス88
那覇市辻2-8-21
☎098-862-3553(辻本店)
http://s88.co.jp/

 

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