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加速するOKINAWAインバウンドビジネス ~その1・空路編~

2014.07.18 Fri.


加速するOKINAWAインバウンドビジネス
~その1・空路編~



近年、沖縄ではインバウンド(訪日外国人旅行)による観光客数が急増。観光業のみならず、産業界全体に大きなビジネスチャンスが訪れている。今回は、2月に運用開始した那覇空港新国際線旅客ターミナルビルの全容紹介に加え、インバウンド客の受け入れ体制強化や満足度向上に取り組むキーパーソンの声を通して、沖縄におけるインバウンドビジネスの新たな潮流をレポートする。


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出典:平成26年度ビジットおきなわ計画


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出典:平成25年度外国人観光客実態調査概要報告(平成25年度観光客アンケート調査等発表会資料より)


未来に対応する拡張性
新国際線旅客ターミナルビルの展望

 沖縄のインバウンドビジネスを支える要所のひとつ、那覇空港新国際線旅客ターミナルビル(以下「新ビル」)の運用開始から、5カ月が経過した。
 新ビルの延床面積は2万3450㎡で、旧ビルの3・6倍。チェックインカウンターは20ブース、出国手荷物検査は4ブース、搭乗待合室は総計約500席といずれも倍増し、空港内店舗数は3倍増の9店舗に。ボーディングブリッジ(ビルと旅客機をつなぐ搭乗橋)も4基新設され、複数の航空会社が共同利用できる「共用チェックインシステム」の採用など、規模・設備ともに大幅に拡充された。
 那覇空港の国際線には現在、航空会社11社がアジア7都市から乗り入れている。国内線を加えると滑走路1本では限界に近いため、第二滑走路の建設も進行中だ。「新ビルの特徴は拡張性の高さです。5年後に第二滑走路が完成する時点で国際線と国内線を連結する施設が建つと、新ビルのさらなる増床と機能拡充が可能になります」と語るのは、那覇空港ビルディング株式会社の事業部企画課長、仲里求さん。連結施設が実現すれば国内・国際線合わせて年間最大2000万人もの乗降客への対応が可能になるそうだ。
 全国で空港の統廃合が進む中、拡張を続ける那覇空港。今年3月にはシンガポールのチャンギ空港と県が相互協力連携協定を締結したが、仲里さんは「東南アジア有数のハブ空港とつながり、誘客・物流の両面で可能性が広がります」と力を込める。「5月には国内・国際線間を15分間隔で結ぶ無料バスも運行開始しました。利便性を高めるこうした取り組みもさらに進めていきます」と意欲的だ。

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那覇空港新国際線旅客ターミナルビル落成式典の様子

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4基あるボーディングブリッジでは現在、小型機3機または中型機1機、小型機1機の同時駐機が可能。周辺駐機場の整備が進めば、小型機4機または中型機2機の同時駐機が可能になる。タラップを使って乗降する「オープンスポット」の併用で駐機数の増加にも対応できる

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琉球建築をモチーフにした2階のチェックインカウンター。カウンター上部の液晶パネルの表示は、航空会社ごとに切り替わる

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那覇空港ビルディング(株)の仲里求さん


誘致の次は満足度向上
見えてきた今後の課題

 ところで、沖縄ではなぜここまでインバウンドビジネスが重要視されるのか。一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー(以下「OCVB」)海外事業部海外プロモーション課長の玉城扇さんはこう答える。「沖縄の観光客数は、復帰以降右肩上がりで順調に伸びていましたが、平成21年頃から変化が出始めています。これは、少子高齢化に伴って日本の人口が減少傾向に転じ、国内市場が縮小していることが原因。つまり、海外市場に打って出るしかない、というわけです」
 沖縄県では5年ほど前から航空路線の誘致活動に注力。平成26年度には「インバウンド客80万人」という目標実現に向け、海外プロモーションを積極的に展開している。その成果として、海外航空路線の年間提供座席数を約108万席確保。平均搭乗率を70%と見積もっても、直行定期空路だけで年間約75万人のインバウンド客を獲得できる計算になる。これにクルーズ船やチャーター便の乗客数を加えれば、目標達成はかなり現実的だ。
 「インバウンドビジネスの魅力にはまず、消費額の大きさが挙げられます」と玉城さん。「沖縄を訪れる日本人観光客一人当たりの平均消費額が約6万7000円なのに対し、インバウンド客は約9万6500円(空路の場合)という調査結果もあります。さらにクレジットカードでの支払いで消費額が上がる傾向もあり、カード取扱表示をしている店舗は有利ですね。また、インバウンドによる物産への波及効果も期待できます。沖縄の知名度が上がることで、海外市場の開拓がしやすくなるのです」と話してくれた。
 一方、沖縄でインバウンドビジネスを伸ばしていくには、多言語対応、空港や港から目的地までを結ぶ二次交通の整備など、課題もまだまだ山積みだ。「今後は沖縄を訪れた際の満足度向上を図るため、受け入れ体制整備や人材育成に係る取り組みにも力を入れていきます。支援メニューも多数ありますので、積極的に活用していただきたい」と玉城さん。
 「また、県とOCVBでは、業種や規模に関係なく誰でも参加可能な『外客インバウンド連絡会』を開催しています。インバウンドの理解を深めるいい機会になりますので、ぜひご参加ください」とのこと。連絡会参加をきっかけにインバウンドビジネスに乗り出した企業もある(コラム参照)。好機をとらえるためにも、まずは一歩を踏み出してみてほしい。

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「沖縄観光国際化ビッグバン事業」の一貫として、香港で開催された博覧会へ出展。沖縄観光とリゾートウエディングの情報を発信した

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(一財)沖縄観光コンベンションビューローの玉城扇さん


PickUp Company
多言語対応でインバウンドに一歩先行
===株式会社シーサー

 ダイビングショップ「マリンハウスシーサー」を運営する株式会社シーサー。「外客インバウンド連絡会」(本文参照)への参加をきっかけに、ホームページやパンフレットの多言語対応、グローバル人材の積極採用、海外でのPR活動など、インバウンド客の誘致・受入体制を整備し、飛躍的に業績を伸ばしているという。
 同社では、年間150人程度だったインバウンド客が、積極的に取り組み始めた平成23年から急増し、25年は2,570人、そして今年は5,000人に達する見込みとのことだ。事業開発課長の斉藤圭祐さんは「最近の傾向として、旅費やホテル代を節約してアクティビティにお金をかける若い世代のインバウンド客が増えている印象です。当社が目標として掲げる『インバウンド客年間1万人達成』も現実味を帯びてきました」と話す。なお、今年の夏は、英語と中国語が堪能なマレーシア出身のスタッフを軸にした8人のグローバル人材で対応する予定だという。
 「海外でのPR活動の一部を支援する『海外セールスコール支援』をはじめ、『翻訳支援』や『Wi-Fi設置支援』など、OCVBによるインバウンド客受入体制の支援メニューを当社でも積極的に活用しています」と斉藤さん。観光客との接点がある事業者なら、活用しない手はなさそうだ。

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平成26年1月にパリで開催された「the 16th Paris International Dive Show」に参加。沖縄のダイビングの魅力についてアピールした

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左から斉藤圭祐さん、インバウンド客対応に活躍する中国人スタッフの邱さん


株式会社シーサー
那覇市港町2-3-13 ☎098-941-2715(代表)
http://www.seasir.com/


PickUp Company
沖縄に「また来たくなる」魅力を
中国語(繁体字)で発信
===來來琉球(LLC合同会社)

 「來來(らいらい)琉球」は、沖縄観光ガイドブック仕立ての中国語(繁体字)フリーペーパー。台湾や香港から訪れる旅行者の必須アイテムとして、支持を集めている。
 「旅の満足度と再訪意欲を高めるため、穴場紹介も含めて幅広く豊富な情報を網羅するよう心がけ、沖縄らしい『空気感』の表現、マップの正確さにもこだわって
います」と話すのは同誌の発行元、LLC合同会社の営業部長・宮内みどりさん。
 同社ではインバウンド客のニーズや傾向をつかむため、配布時のヒアリングやSNSなどでの情報収集も欠かさないという。「最近人気なのは、『ドラッグストア』『港川外人住宅』『チャペル』『ブランド肉』などですね」とのこと。
 インバウンドビジネスについては、自社ホームページの多言語化による情報発信と並行して、外国語のパンフレットや案内板といった最低限の受け入れ体制を整備することの大切さを強調していた。

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今年で創刊6年目になる「來來琉球」は1月と7月の年2回、各5万部発行。那覇空港国際線ターミナルや那覇市観光案内所などで無料配布中

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宮内みどりさん(左)と通訳案内士の資格を持つ台湾出身の李さん


LLC合同会社
☎098-988-9095
http://www.lailai-net.com